第6章 嫉妬
「どうしてここに・・・?」
「お母さんから聞いたの。水臭いじゃない。私たち幼馴染なのよ?留美子の結婚する相手が、凄いイケメンだって聞いたの。ねぇ、私に紹介してくれない?」
「どうして紹介しないといけないの?」
「何よ、冷たい事言わないでよ。ひょっとして、過去のことまだ根に持ってるの?あれは留美子が悪いんじゃない。簡単に鞍替えする様な男と付き合ってたんだから。」
「紹介したら、どうするつもり?」
「そんなの決まってんじゃない。相手はイケメンでお金持ちみたいだし、気に入ったら私が貰ってあげる。」
「私たち、婚約しているのよ?」
「あぁ、慰謝料的なこと?そんなの、お金持ちなんだから、その男に払わせればいいじゃない。留美子より私の方が綺麗だから、きっと私を気に入ると思うわ。」
相変わらずの自意識過剰。何も変わっていない。他人のものが大好きな性格はどうやらそのままらしい。
「それで、相手は?」
もう、自分のものになるのだと疑いもせずに、紹介されるのも当たり前だと思っている幼馴染。
「紹介なんて、する訳ないでしょ。じゃあね。」
「何でよっ!!あぁ、私に取られるから?でも、それって仕方ない事じゃない?留美子は真面目で垢抜けない。私の方が美人で人の目を集めてしまうんだもの。って、何処に行くの?今日、私は宿を取っていないから留美子のところに泊めて貰おうと思ってんのに。」
この幼馴染は、何処まで私を馬鹿にするのやら。私は溜息をついた後、スマホを取り出しては電話を掛けた。
「・・・はい。」
「残念だけど、言われた通りだった。」
「そう・・・うん、分かった。そのままそこで待ってて。」
「えっ、でも今日は・・・。」
「大丈夫、もう直ぐ近くにいるから。」
いつだって私を気遣ってくれる彼は、いつだって私を守ってくれようとする。
「留美子、誰?あ、ひょっとして留美子の相手?ちょっと、電話貸しなさいよ。私が話したいから。」
私のスマホを取り上げようとする幼馴染。でも、直ぐに車のクラクションの音がして音のする方に意識を向けた。
彼は車から降りると、真っすぐに私に近付きハグした。
「ただいま、留美子さん。」
「お帰りなさい。まさか、本当にこんなに早く帰って来るとは思ってなかったわ。」