第1章 年下美男子に拾われました
「さっきも言ったけど、嘘つきは嫌いなんだよね?まさかと思うけど、付き合うことを無かった事にしたいなんて事は言わないよね?」
釘を刺された!!!
「は、はい・・・。」
断れなかった。
「大丈夫だよ、僕も嘘つきは嫌いなんだ。だから、ちゃんと大切に持て余すくらい愛して大事に大事にするから。」
ちょっぴり不穏な言葉が聞こえた気がするけど、突っ込みなんて入れられなかった。だがしかし、現在、私には同棲したままの相手がいる。
「あ、あの・・・お話しした同棲を・・・。」
「そうだったね。その前に・・・未練は無い?」
「それは・・・。」
彼氏が冷たくなったのは半年くらい前からだ。その頃から、私の後輩と付き合っていたのかもしれない。彼は私が働く会社の取引先に勤めている。それが縁で、付き合うことになったのだけど。
「私・・・浮気する人、ダメなんですよ。」
「それを聞けて安心した。じゃあ、朝食食べたらいろいろと動かないとね。今日は週末だし、時間は有限だから。」
朝食は、美男子が用意してくれた。こんなに美男子で物腰が柔らかいのに、何でも出来るんだなと天はこの人に二物も三物も与えたのかと思った。
「この卵焼き、凄く美味しい・・・。」
「良かった、お気に召して貰えたみたいで。今後は、幾らでも留美子さんの為に腕を奮うから楽しみにしてて。」
そう言っては、いい笑顔を見せてくれる。こんな美男子が、何故私みたいな地味な女を気に入ってくれたのか理解出来ない。そして、食事の後に向かった先は同棲していたアパートだった。
意外にも、そう遠距離ではなかったので物の二十分程で到着。そして今・・・私はある物に気付いて呆然と立ち尽くした。
「ひょっとして・・・留美子さんの私物?」
アパートのゴミ捨て場に無造作に捨てられていたのは、見慣れた私の物。ショックを受けすぎて泣く事も出来ない。ただ、呆然とその光景を見ているしか出来なかった。
「貴重品とか大丈夫?」
気遣わしそうに私にそう聞いてくれた美男子に、私は頷くことしか出来なかった。
「もう一つ、聞いてもいいかな?ここら辺のアパートの家賃って、そう安価じゃないと思うんだけど誰が払ってるの?」
私は美男子の言おうとしている意味が分からなくて、ノロノロと視線を向けた。