第5章 再会
「この人、新しくウチの担当になったQ銀行の小林さん。俺たちと同じ大学出身なんだよ。」
「・・・そうですか。」
含みのある物言いに、私は背筋がピシっとなる。
「小林さん、こちらが、社長秘書の相良です。」
「は、初めまして。小林 健男と申します。」
「こちらこそ、相良 圭太と申します。それで、どの様なお話しをされていたのですか?」
流石、社長秘書。目つきが鋭い。
「それは「な、懐かしい大学時代の時の話しです。お恥ずかしい話しですが、当時、南野と私が付き合っておりまして懐かしくなったので、つい懐かさ故に話しをしたくなっただけです。」」
「恥ずかしい?今、恥ずかしいと仰ったのですか?」
「えっ?」
「我が社で働いている南野は、恥ずかしいと言われる様な人ではありません。撤回して頂けますか?」
「えっ?えっ?あ、えっと・・・。」
「我が社の社員を、侮辱するなと言っているのです。」
「侮辱だなんて、そんな・・・。」
「付き合っている事が恥ずかしいと仰ったでしょう?」
今カレはケロっとしているけれど、元カレは真っ青になっている。私に助けを求め様とチラチラ見て来るけれど、私は放置だ。私だって、相良は怖い。
「何をやっているんだ、お前たち。」
真打登場だ。社長である。
「社長、お疲れ様です。こちらQ銀行の小林さんと仰る方でして、南野さんと過去にお付き合いされていた様ですが、その事が恥ずかしいと仰ったので撤回を求めていた次第です。」
あぁ、元カレの顔色が土色になっている。
「キミが南野さんの・・・で?」
「えっ?」
「まさかと思うけれど、復縁とか考えたりはしていないよね?南野さんはウチの弟の婚約者なんだ。部外者がしゃしゃり出て欲しくないのだけど。」
「い、いえ、そんな事は・・・た、ただ、懐かしくなって話しをしたいと思っただけで・・・。」
「過去の吐いた言葉を口留めする為・・・とか?あぁ、ウチの弟の事も貶してくれたこと聞いているよ。」
あ・・・どうやら、耐えられなかったらしい。一目散に逃げていった。
「情けない男ですね。」
「うん、そうだな。・・・侑佑の為に、一言言っておくか。侑佑が暴走する前に。」
「暴走って、兄さんそれは酷いよ。別に俺は、アイツを銀行から摘まみ出すまでは考えていないよ。」
「侑佑くん、私が対処しますので社長もその辺で。」
