第2章 愛情ゲージ
「め、滅相もございません。」
そうか、今まで断っていたのか。
「じゃあ、留美子さん今日から一緒に帰ろうね。僕も早く仕事終わらせるから。」
「おいおい、そう簡単な仕事量じゃないだろ。」
「煩いよ、兄さん。僕が遣れないって思ってる?もし、ここでそれを聞いた留美子さんに僕が仕事が出来ないヤツだと思って嫌われでもしたら・・・祟るよ?」
「あ、すまん。」
社長でお兄さんなのに謝るんだ。
「留美子さん?」
「うん?」
「一階のロビーで待ち合わせね?あぁ、それと・・・。」
彼が後輩を一瞥した。ビクッと体を震わせた後輩。
「会社のPCを、私物化し過ぎじゃない?あんな品のないメールのやり取りは、削除する事をお勧めするよ。」
後輩の顔色が真っ青だ。一体、どんなやり取りを誰としていたのだろうか。
「プ、プライバシーの侵害です!!」
「じゃあ、社長に見て貰おうか?キミの品のないメールのやり取りの数々を。あぁ、社長相手にもプライバシーとか言うの?」
「そ、それは・・・。」
「まともな仕事も出来ないくせに、あんな状況を作るって人として終わってるよね。僕はキミが良く知っている誰かとは違うし、留美子さんって可愛い恋人がいるから今回だけは見逃してあげる。一応、僕も非常勤とはいえここの役員だから。」
今の今まで怖い顔をしていたのに、私の手を握り笑顔になる。
「それじゃ、また後でね?」
彼は兄である社長を伴い、去って行った。
えぇっと、視線感じるけど仕事しよう。良かった・・・今日のランチで、澄子さんに彼とのことを話しておいて。まぁ、後で質問攻めされるだろうけれど。
後輩は泣きながら何処かに行って、そのまま帰っては来なかった。他人を蹴落とすのは嬉々としてやるのに、えらく打たれ弱かった様だ。
仕事に没頭して数時間。肩を叩かれ我に返った。
「澄子さん?」
「定時だけど、終われそう?美男子の彼氏待たせるんじゃない?」
「・・・そうですね。」
「明日にでも、色々と聞かせてね。」
「お手柔らかに。」
慌てて帰り支度をしては、約束の場所へと向かった。柱に寄り掛かって人待ち状態の彼を見つけた。
「ごめん、待たせた?」
「ううん。お疲れ様。」
「侑佑くんもお疲れ様。」
「じゃあ、帰ろうか。」
帰り道での車内。私は社長が言っていた事を尋ねた。