第1章 🌱𓂃 𓈒
「お待たせ、ユウリ!」
後ろからソニアの声が聞こえ、振り返るとそこにはソニアと件の男が並んでいた。
ソニアは嬉しそうにユウリの腕を引くと、彼の前に立たせた。
「彼がガラル地方のチャンピオン、ダンデくんよ」
紹介された男性はユウリと目が合うと爽やかに笑って片手を差し出す。
「はじめまして」
健康的な褐色色の肌、紫色の長い髪、
顔は若々しく年はさほど変わらないのだろうが、丁寧に整えられた髭は王者の貫禄がある。
とはいえ、どこか近くに住んでいるお兄さんのような雰囲気もあり、彼の人気の理由がうかがえた。
差し出された手を握ると、彼は握手したままユウリに問いかけた。
「君の名前は?」
「ユウリです…
ポケモン総合医療センターで…薬剤師をしています」
ユウリは顔を伏せがちに答えると、ソニアが横から口を挟む。
「ユウリは優秀な薬剤師なの!
この前、PPエイドを改良して、学会で表彰もされたのよ」
「へぇ、それはすごいな」
感心して目を丸くするダンデに、ユウリは頬を赤らめながら小さな声で呟いた。
「それはソニアが褒めてくれてるだけで…」
「医療チームのおかげで、ポケモンたちと戦えてるんだ、
いつも感謝してるよ。ありがとう」
褒められすぎて頬を染めるユウリをダンデはジッと見つめ
「それで……今日はどういった用件かな?」と問いかけた。
「あ、その……」
あまりの緊張にユウリが次句を言い淀んでいると、
ソニアが「立ち話もなんだし」と一歩踏み出して口を開いた。
「せっかくだから三人で夕食でもどう?」
「いいね」
「もちろん、ユウリも一緒に行くよね?」
「う、うん」
ユウリが返事をするなり、「じゃあ行こうか!」と言ってソニアは彼女の手を引き歩き出した。
突然のことによろめきそうになると、ダンデがすかさず腕を伸ばして支える。
「ソニア、あんまり急ぐと危ないぜ」
「ごめん、二人を紹介できたのがつい嬉しくって。
私先に行って席があるか見てくるね!」
はしゃぐソニアを見て、ダンデは呆れたように肩を上げる。
「ソニアは君が大好きなんだな」
「嬉しいです、私もソニアのことが大好きなので」
照れながらも、笑顔で答えれば、
ダンデは柔らかな笑顔を浮かべユウリを見つめた。