第1章 不思議な靄
紡side
入学式もホームルームも終わり、学校での予定が全て完了した。
皆それぞれ帰り始めている。
僕も帰ろうと鞄を持つ。
「あんた、帰り道どっち?」
訛り口調で声をかけられた。
でもこの声は稑くんじゃない。
「え、えっと……」
見上げると琉己くんだった。
黒い靄も今は嘘かのように消えている。
もしかしてお墓にしか現れないのかな?
「1丁目……の方……」
「ふーん……一緒に帰る?」
「え?」
どうして僕と?
方向が一緒だとしても今日少し話しただけだし。
「え、えーと……」
琉己くん、悪い人ではないんだろうけど朝の事も気になるし、2人だと気まずい。
何を考えているのかも分からない。
第一印象としては近付き難い人。
返事に困っていると
「ちょっと琉己!今日は俺の家に来るって言うたやん!」
「あ……そうやったな……ごめん、また声かけるな。」
稑くんが琉己くんの腕を引っ張り怒っている。
この2人は本当に仲がいいんだな。
「今日……何の日か忘れたん?」
「覚えてる……」
『仲がいい』?
何か今物凄く友達とは言えないような深い関係のようなものを感じた気がした。
2人は僕に手を振って教室から出ていった。
「っ!」
急に頭痛が走った。
今まで感じたことがない痛み。
痛みに耐えていると琉己くんと稑くんの後ろに人影のようなものが見えた。
「え……」
その影は瞬きした瞬間に消えていた。
何だったんだろ……でも何か悲しいものを感じた。
「帰ろ……」
荷物を持ち直し家に帰ることにした。
もっとこの村のこと知りたいけど今日は凄く疲れたから帰って寝よう。