第2章 初恋
紡side
「っ!ミキ……じゃない……」
「……はじめまして。ミキちゃんの彼氏さん……ですよね……」
「あの!ミキはどこに!」
この人はきっと信じてくれる。
そう思って僕は彼と話をしようと前に出た。
「ミキちゃんは今僕の隣にいます。」
「ミキ……ミキはなんて……」
ミキちゃんは暫く無言だった。
何かを考えているようだった。
「ミキちゃん……彼に言いたいことは?」
『……待ち合わせに遅くなってごめんね。』
僕はミキちゃんが話す言葉を一言一句正確にユウくんに伝えた。
「待ち合わせに遅くなってごめんね。勝手に居なくなってごめんね。この先ユウくんともっと色んな所に行って色んなことをして、結婚して……幸せな家庭を気づきたかった。重いって思われてもいい。でもそのくらいユウくんを愛してる。」
その言葉を聞いてユウくんは泣き崩れた。
プレゼントされた時計を大事に両手で包んで泣いている。
「ユウくんはこれから先もっといい人と出会える。幸せになってね。」
「……ミキ……君以上に良い人なんていない。ずっと君だけだ。絶対に忘れない。」
隣にいるミキちゃんは我慢できなくなってユウくんの元へ抱きつきに行った。
透けて触れないはずなのに何故かユウくんは温もりを感じたのか、はっとした表情になった。
「ミキ……?なのか?」
『うん……ほんとにごめんね。ユウくん大好きだよ。ずっとずっと見守ってる。』
声も聞こえたのか、そのミキちゃんの言葉の後にユウくんは頷いた。
「俺も……大好きだ。愛してる。」
不思議だ。
見えないはずなのに。
「あの……ミキを連れてきてくれてありがとうございました。」
ユウくんは僕の顔を見て感謝の言葉を述べた。
物凄く嬉しそうだ。
よかった。
「いいえ……僕にできることはこれくらいしかないので。」
僕はユウくんに頭を下げその場から離れた。