第2章 初恋
紡side
『その机の引き出しに入ってる。』
引き出しを引くとプレゼント用に包装された青いリボンの付いた箱が入っていた。
メッセージカードには『Happy birthday』と書かれている。
『彼がずっと欲しがっていた時計なの。誕生日に必ず渡すからって約束したの。……まさかその前に死んじゃうなんてね。』
「彼氏さんの誕生日はいつなの?」
『ん?今日。』
今日!?
だったら今日持って行かないとじゃん……
『ギリギリセーフだね!』
この人は僕を便利屋か何かと勘違いしてるんじゃないよね?
僕はミキちゃんの態度に少しイラつきを覚える。
でも人は死んでしまったら何も残らない。
そう考えるとこの人の最後の願いを聞いてあげたい。
家族のためにも、愛する人のためにも。
『さ、行こ行こ!』
ミキちゃんはさっさと部屋から出ていってしまった。
「え、ちょっとまってよ!」
ふと、ミキちゃんの机の上に視線が止まる。
ボールペンと便箋だ。
ミキちゃんはあんな風に言ってたけど……
喧嘩別れした状態なんて絶対に良くないよね。
僕はボールペンを手に取り、便箋に文字を書いた。
ミキちゃんのあの表情……後悔してる顔だった。
きっとミキちゃんが伝えたいことは……
『あ、もう遅いよ!何してたの!』
「ごめんごめん。」
ミキちゃんの部屋の窓から出て脚立を降りた。
ミキちゃんは腕組みをして待っていたようだ。
『もしかして……私の下着盗んでないよね?』
「はぁ!?!?そんなことするわけ!!」
『だよねーだって君が好きなのは……』
「だぁぁぁぁ!!ほら早く彼氏の家に案内してよ!!!!////」
『はいはい。』
ミキちゃんはニヤニヤしながら僕を見て彼氏の家まで案内してくれた。