第2章 初恋
紡side
「ここ?」
『うん!ここが私の家!』
僕たちの住んでいる村から町の方面へ電車で約45分。
そこから更に15分歩いた先に見えた一軒家がミキちゃんの家。
バイトも学校もない日に時間を作ってミキちゃんの頼みを叶えようとここまでやってきた。
どうやら今は誰も家にいないようだ。
「で、どうやって入ったらいいの?」
『え?窓から。』
こういうのって普通鍵の隠し場所を教えてくれるんじゃないの?!
ミキちゃんの家2階にあるみたいだし……
これを登れと??
『庭に脚立置いてるからそれで。』
そう言ってミキちゃんは庭の方を指さしニコッと笑った。
「こんなの不法侵入だよ……」
僕は渋々庭に足を踏み入れ脚立を手に取る。
丁度その真上がミキちゃんの部屋みたいだ。
僕は誰かの目につく前に脚立を立てかけ急いで登る。
窓にギリギリ届いた。
『早く早く!』
「誰のためにこんなことしてると……」
窓に手をかけると鍵が開いていた。
『私生きてる時いっつも鍵閉め忘れててお母さんによく怒られてたな。……お母さんが鍵を閉め忘れることは絶対ないんだけど……』
その言葉を聞いて、一瞬だけこの部屋の記憶のような物が僕の頭の中に流れてきた。
ミキちゃんのお母さんらしき人が黒装束を着てこの窓を寂しそうに眺めていた。
なんとなく、この窓の鍵が開いたままな理由がわかった気がした。
きっとわざと閉めていないんだ。
開けたままにしてミキちゃんの思い出を残しておきたいんだ。
僕は窓から靴を脱いで部屋の中に入る。
『……お母さん心配だなぁ。』
「……ミキちゃん、お母さんに伝えたい事はないの?」
『うーん……』
ミキちゃんはしばらく考えて口を開いた。
『いっぱいありすぎて思いつかないなぁ。』
そう言葉にしたミキちゃんの瞳は少し潤んでいる気がした。
『死ぬ前に喧嘩しちゃったんだよね。』
「そう……なんだ。」
そんなの悔いが残るに決まってる。
成仏なんてしたくても出来ない。