第2章 初恋
紡side
「ミキちゃん、だっけ?僕に何か用?」
路地裏に行き、近くの積み上げられたビンの空箱に腰をかける。
僕の問に対してミキと名乗ったその霊は顔を赤らめ僕に頼み事した。
『お願いがあるの。ある人に渡して欲しいものがあって。』
「そのある人って?」
ミキちゃんはモジモジとして小さい声で
『……私の彼氏……』
と呟いた。
彼氏……
いいな……
幸せそう。
ふと、そう思ってしまった。
『私、事故で死んじゃったんだ。先週、彼氏とデートの約束だったんだけど私待ち合わせ時間に遅れちゃって……急いで行かなきゃって思って走ってたら車が来てるのに気づかなくて……』
「そうなんだ……辛かったね……」
『凄く痛くて……凄く苦しくて……少しづつ意識が遠のいて……気づいたらそこに立ってた……でも誰も私に気づかなくて私死んだんだって』
こうやって死んだ人の声を聞くのは初めてだけど、やっぱり話を聞くだけでも辛い。
成仏出来ずにここで彷徨っていたんだろう。
「その渡して欲しい物って?」
ミキちゃんは彼に渡すはずだったプレゼントを渡して欲しいと言った。
でもどうやらそのプレゼントは家に置いているらしく、それを渡して欲しいとの事だった。
「その家にあるプレゼントをどうやって取って、どうやって名前も顔も知らない彼氏に渡すっていうんだよ……」
『ごめん……無理だよね……』
ミキちゃんは悲しそうな顔をして俯いてしまった。
そんな顔されたら……
「っ!!わかった!わかったから!!でも今日は無理!1週間は待って欲しい。」
今は琉己くんを待たせてるし、この後はバイトがある。
『ありがとう!私待ってる!』
嬉しそうな表情をしている。
僕もその顔を見て何故か嬉しくなった。
この子が成仏出来るために何とかしてあげないと。