第17章 羽虫一族
七年前頃に集められた貴族の令嬢たちは、こぞって城へと集まったと聞く。しかし、妃選びところか子を作ることしかせず、段々と貴族の中でも娘を差し出すのを躊躇する様になった。
だが、押しの強い貴族の娘が婚約者として決定した。しかし、愛人を囲うことは止めなかった。年々増えていく愛人と子。
それでも婚約者となった令嬢は、苦言を言えども何もしなかった。が、どうやらエイリンの事を聞いて気が変わったのだろう。執着の仕方が、尋常ではなかったのだから。
それでも、一度破棄となった婚約は、結び直すことは出来なかった。というのも、相手は高位の貴族の令嬢だ。隣国のこれまた高位の貴族へと早々に輿入れをしてしまった。
さぞ、令嬢の両親は安堵しているだろう。今では、それなりに幸せに過ごしていると聞く。それでも、始めはあの下半身男を捜索していた様だったが。
ノアから聞かされた案件の中に、強制的に城へと招集された令嬢たちの名簿に目を走らせた。
「・・・以前と違って、些か若いな。」
「その分、長い期間勤められますから。」
名簿の中の令嬢たちの歳は、大方10代半ば。それが、妃としてではなく、ただ欲を吐く為だけの存在にされる。
「気の毒にな・・・。」
「左様ですね。そして、もう一つお耳に入れたいことが。今のあの者に、正式の婚約者はおりません。それを良いことに、ある高位の貴族に養女として迎い入れる事を命令したと聞きました。」
養女となる対象は、言われなくとも分かる。それだけ、エイリンに本気になったのだろう。
「これも、見越しての情報公開だったのですか?」
私はエイリンとの関係を、隠すことはしなかった。王族ならば、生娘でなければならない公的な理由がある。
「あの下半身男も知ったのだな。」
「えぇ、大激怒だった様です。しかし、直ぐに箝口令が。ただ、王妃の耳には入ってしまった様で・・・。」
「実の親を手に掛けたのか?」
「力ずくで脅迫したそうです。国王に話したら、母子共にあの世に送ると言って。今は、療養として公の場には出て来ない様です。」
エイリンを手に入れて、直ぐにでも自分のモノに出来る様に下準備をしているのだろう。そもそも養女として迎い入れさせようとしている貴族には娘がいた。その娘は、愛人として囲い込んだ。邪魔だったのだろう、実の娘の存在が。