第17章 羽虫一族
「フフ・・・。」
つい、漏れた声。そんな私に、怪訝な目を向けるのはノーチェ様。この漏れ出た声の意味を理解してのものだろう。
「いい結果か?」
「さぁ、どうでしょう?ただ、あの下半身男を引取ったそうですよ。更に金になるところに売るのでしょうかね。」
「よく娼館も手放したな。」
売れっ子の且つての王子は、今では引く手数多の存在だ。
「おや、そういうことですか。」
「どうした?」
「記憶が戻ったそうですよ。」
「このタイミングでか。また一波乱起こりそうだな。」
その会話を交わしたのは、五日前。そして、その想像は思ったより早い段階で実現したらしい。
「ヤリ手ですね。あの羽虫一族は。」
「ウチで出店の許可を出さなくて良かった。」
あの商人として知名度のある当主のコリスは、色んな国に身内を忍ばせている。この国でも、ひっそりと存在しているだろう。出店は許可しなかったが。
「それで?」
「王族として、返り咲いたそうですね。そうしなければ、国の物流が止まると脅された様です。」
「元々、かなりの役人と癒着があったからな。」
コリスとしても、あの下半身男を王族にいさせた方が、利が大きいのだろう。代わりに娼館への金は惜しまなかったのだろうが。
「では、私は迅速にエイリンに泣きつかなければなりませんねぇ。これも神のお導きなのでしょうか。」
「まさか、まだ諦めてないのか?」
「その様ですね。愛人として囲い込み、金蔓としても利用しようとしている様ですね。全く以って図々しい・・・。」
エイリンの作る薬の効能は尊い。そして、神の恩恵も兼ねているのだ。コリスからすれば、喉から手が出るほど欲しい人材だろう。
「では、私は少し出掛けて参ります。」
「程々にな?」
「おや、使う言葉を間違えておられませんか?」
「なら、完膚なきまでに遣って来い。」
ニヤリと笑うノーチェ様に、一礼しては私はテレポートを使った。
「状況は?」
「返り咲いたまでは良かったのですが、離宮に囲っていた者たちは解散させられた後です。故に、今は変わりの女人を集めています。」
あの下半身男は、貴族の者しか手を出さない。故に、平民からはあの容姿であの気安さからそれなりに人気はある。
「さぞ、貴族たちは戦々恐々としているだろな。あの時の様に・・。」