第16章 貴族
「そうか、それは嬉しいな。」
あれ?どうしてキョロキョロしているの?って、まさかっ!?嫌々、絶対私はこんな開けっ広げな場所でなんて嫌ですからね。
「私の執務室に行こう。寝室が続きになっている。」
「えっ?ど、どうしてそんな情報を?」
「ん?まさか・・・あの二人の様な、あの状況が好みか?」
ブンブンと首を横に振る。何故、そんな解釈になるの。
「では、行こうか。」
結局は、執務室に連れ込まれました。必要最低限のものしかなく、殺風景なリューさんの執務室。その部屋を通り抜け隣りの部屋のドアを開け私を中に押し込めてから後ろ手にドアを閉め施錠したリューさん。
「あ、あの、どうして鍵を・・・。」
「誰にも見られたくない。ほら、座ってくれ。」
座ってくれと言われても、この部屋には大きなベッドと書棚しかない。一番端のベッドに腰を下ろし視線を彷徨わせていた私。
「リューさん?」
何やら、引き出しを開けては何かを取り出している様子。
「エイリン、これを贈ろう。」
手渡されたのは、美しい宝石が付いたネックレスと何故か数種類の薬草だった。ネックレスは百歩譲って分からなくはない。
しかし、何故薬草?
「・・・あっ、この薬草は・・・。」
「媚薬を作るのに使われているものだ。手に入ったから、エイリンに進呈する。良かったら使ってくれ。」
そして、私はというと・・・躊躇しながらも受け取った。受け取らないという選択肢はなかった。
「あ、ありがとうございます。」
「但し、分かっているな?試作は私だ。」
「えっ・・・。」
「私だ。忘れるな?」
薬草を握り締めたまま、何度も頷く私。
結果的には、年配の貴族の中で流行する媚薬となるのをこの時の私は知らない。
この後、リューさんにちょっぴりだけ味見されてからの帰宅です。ちょっぴりと言いつつ、ほぼ襲われた様なものだけど。
ただ、あの時の令嬢は何も考えていない人なのか考えすぎておかしくなった人なのか不明だけど・・・どうやら、お城で後日リューさんに身体の関係を強要しようとしたらしい。
「私は胸の大きな女性が好みですから。」
と、意味の分からない台詞を真顔で吐いて、相手を驚かせて立ち去った様だ。そうは言うけれど、夜の生活ではそんなことを気にしている様には見えないのだけど。