第16章 貴族
「第一、親の威光でしか言い寄れないあんたにこそ勿体ないわ。リューさんは私のなの。誰にもあげない。」
「なっ!?公爵家のこの私にそんな事を言うなんて不敬よ。お前は平民なのだから、酷い罰を与えてやるわ。」
「そんな事をしたら、リューに潰されるぞ。いい加減、その辺で止めておけ。私からシュリン嬢の縁談について叔父上に進言しておく。」
叔父上?・・・王太子の従兄弟なの?
「嫌よ、私はアンドリューがいいの。そう決まっているの。ノーチェ様だって、その方が都合がいいんじゃないの?」
「それ、どういう意味?私を見くびっているのか?」
「あ、そ、その・・・。」
王太子の目が怖い。
「今まで黙認して来たが、そうだな・・・シュリン嬢の伴侶は父上に決めて貰おう。光栄に思うがいい。それと、二度とリューに関わるな。これは命令だ。」
令嬢は顔を強張らせ、逃げる様に去って行った。
「すまない、リュー。従兄弟だからと私が甘く考えていた。」
「いえ、お力添えを頂けて感無量です。」
「・・・うわ、久しぶりの上辺だけの言葉だ。まぁ、今後は安心してくれ。」
王太子が去った後、その場に残された私たち。
「エイリン・・・その、さっきは暴露してすまない。」
「暴露って、ひょっとして胸のことですか?」
「しかし、私が好きなのはそれだけではない。勘違いしてくれるな。何なら、エイリンの好むところを並べてもいい。」
お城でこれ以上の辱めは止めて欲しい。
「それより、あの人のこと・・・胸が大きくないってどうして知っているのですか?」
「学生の頃にハプニングがあってな・・・ドレスから、何重にも重ねられていたパッドが落ちたことがあった。」
暫し、私はリューさんを見詰め合っていた。
「それはハプニングとしか言えませんね。」
それも、好きな相手の前でなんて・・・。
「この私と、今まで何百回聞いて来たか分からない。他の言葉を知らないのもどうかと思う。それに引き換え、先日はエイリンから私を愛してくれただろう?その時のっ!?」
私はリューさんの口を手で塞いだ。でも、その手を舐められた。ざらっとした生暖かい感触。
「リ、リューさん・・・。」
「エイリンの存在そのものが、私にとって褒美でしかない。愛してるよ、エイリン。」
もうどうしようもない。さ、気を取り直して散策だ。
と思っていたのだけど・・・。