第15章 食事とお酒と媚薬
「相変わらず、食いしん坊だな。」
そう言って、顔を出したのはノアさん。彼は裏庭で鍛錬をしていた。サッパリした顔をしていると言うことは、汗を流して来たのだろう。
「食べ尽くす勢いで掻き込むノアに言われたくない。」
「・・・すまん。」
自覚あるのだろう。素直に謝るノアさん。
「あ、俺も言い過ぎた。」
何だかんだで仲がいい。そんな時、焼き上がった様で釜のドアが開けられた。厨房の中には、グラタンの焼き上がったいい香りが充満する。
「ボスを呼んでくる。」
ノアさんがリューさんを呼びに行ってくれている間、私たちは配膳に取り掛かった。やがて、食堂に現れたリューさん。指定の席に座り、湯気が立つグラタンに注視していた。
「これは美味しそうだ。では、いただこう。」
リューさんの声掛けで、食事が始まった。この家では、皆が揃って食べる。
「はああああああっ!!」
ん?皆が声の主を見た。因みに、声の主はテイラーさんだ。恍惚の表情を浮かべ、美味しそうに食べている。
「エイリン・・・このお料理も、息子にレクチャーしていいかしら?」
「え、えぇ、ど、どうぞ。」
食べている間、過剰な笑顔を張りつけて食べているテイラーさん。そんなに気に入ってくれたのか。
「私も凄く美味しいと思う。」
「俺も同感。」
「俺もです。」
最後の一人に目を向けると、微笑ましそうにテイラーさんを見ていたネルさん。うん、この二人も仲よしだ。
「ねぇ・・・。」
急に声がして、食堂の出入り口に目を向けた。そこにいたのは、恨めし気な目をした王太子がいた。
「こんな楽しそうな食事会をするのなら、どうして私を呼んでくれないんだ。冷たいだろう?」
誰もが顔を見合わせて、自分のグラタンを囲い込んだ。誰もお裾分けの精神はない様だ。
「誰も返事しないって、軽く凹むんだけど。」
「ノーチェ様は、お抱えの料理人がおりますでしょうに。」
「それはそうだけど・・・。」
拗ねている。分かりやすいくらい拗ねている。
「因みに、明日のメニューは?」
「ラー・・・い、いえ、まだ決めていません。」
思わずラーメンと言いそうになった。定番のチャーハン付きだ。いいのよ、私が食べたいのだから。
「ふうん、まだ決めていないんだ。じゃあ、明日のランチはよろしく。」
決定事項として言い逃げしていった王太子。
