第15章 食事とお酒と媚薬
レクチャーした翌日から、店は繁盛したらしい。昼過ぎには完売してしまう様で、ルウ作りが大変らしい。辛味を足したり、甘味を入れたりと創意工夫している様だ。
ネルさんたちからは、大変感謝された。
「それで、このスープらしきものは何だ?」
「ホワイトソースです。そろそろ寒くなって来たので、グラタンを作ろうと思って。美味しそうな海老やキノコもありますからね。」
「・・・初めて聞く単語だな。ホワイトソースと言うのなら、これはスープではないのだな。それに、グラタンとは?」
興味津々で覗いているのは、リューさんだ。今日は無理矢理非番にしたそうで、私に張り付いている。
「まだまだ時間掛かりますから、お部屋でお仕事でもなさっててください。」
「そ、そうか。」
残念そうな顔をしたけれど、大人しく引き下がってくれた。さて、隠し味に白ワインを入れて完成だ。
器に炒めた具材を入れては、ホワイトソースを掛けてチーズを乗せる。後の焼き具合などはテイラーさんに丸投げした。
「さて、こっちもいい具合みたいね。」
寸胴鍋を掻き混ぜながら、赤ワインを入れ味を調える。因みに、この中身はチャーシューである。だって、食べたかったんだもの。火を止め、後は味を染込ませるだけ。
「この匂いは、エイリンがまた何かやらかしているのか。」
ひょっこり顔を出したのは、ルカさんだった。今日はリューさんがいるから、ルカさんの護衛はお休みだ。
「あれ、お出掛けしていたんじゃなかったのですか?」
「そうだったんだけどな・・・。やっぱり、ウチで食べる食事が一番いいって思って。あ、ひょっとして帰って来るのが遅かったか?俺の分無し?」
若干、涙目のルカさん。意外に器用な人で、カレーの味も変化させて作ったりする人だったりする。辛い方が好みの様で、私は食べられないのだけど。
「ちゃんと、ルカさんの分もありますよ。」
リューさんが、多分帰って来るだろうから用意してやってと言われていたんだ。もし帰って来なかったら、リューさんが二人分食べると言っていた。
「なぁ・・・この鍋の何?」
「これはまだダメですよ。明日です。味を染込ませていますから。」
「へぇ、手が込んでいるんだな。って、この香しい匂いは何だ?何か、釜で焼いているのか?」