第14章 悪役令嬢
なる・・・かな?貴族の世界は独特で難しい。
「だからさ・・・エイリンは、ボスを大事にしてくれな?エイリンに捨てられたら、今度は女嫌いになりそうだ。」
「そ、そんな事は・・・。」
「両極端なんだよ、ボスの思考回路は。結婚なんてしないって言っていたのに、今じゃエイリンにメロメロだろう?」
確かに・・・と思えると言うことは、きっと今の私は幸せなのだろう。
「兎に角、ボスにおんぶに抱っこされていればいいって。」
「私だって、リューさんの力になりたい。」
「エイリンならそう言うと思った。だからこそ、ボスはエイリンが可愛いんだろうな。」
この世界にヒロインはいなかったけれど、きっとあの令嬢は悪役令嬢の立ち位置。ひょっとしたら、無理難題を言って来るのではないかとか考えてしまった。
その考えは、想像通りだったと数日後分かることになる。
「リューさん、お手紙ですか?」
私を膝の上に乗せたまま、届いた文に目を走らせているリューさん。その表情は、段々と無の状態へと変わっていく。そして、読み終えた後は燃やしてしまった。
「リューさん?」
「訪ねて来るそうだ。」
「えっ?」
「私にどんな文句を言って来るのだろうな。あぁ、心配しなくていい。協力な助っ人を用意する。」
丁度その時、来客の知らせが来た。玄関へと向かえば、そこにいたのはあの令嬢だった。家の中を不躾に見回し、品なく侮蔑の眼差しを向けている。
「流石、王太子の側近とは言えしょぼい家ね。」
「お気に召さなければ、お引き取り頂いたら如何でしょう?まさか、ようこそおいでくださいましたと私が言うとでも?」
令嬢は鋭い目を向けたけれど、何か思い直した様で表情を変え私を見た。つい、リューさんの背後に隠れてしまう。
「その女との婚約は破棄なさい。代わりに私が貴方の婚約者となってあげるわ。」
「どうして私が愛する者と別れさせられ、望まない相手を娶らないとならないのでしょう。」
「お前の意見などどうでもいいのです。この私の言い分だけを聞いていればいいの。そうね、この狭苦しくて貧乏そうな家は捨てて、大きくて広い屋敷を用意なさ・・・えっ、どうして?」
いつの間にか、私の背後に王太子がいた。
「続けなよ。大きくて広い屋敷を用意した次の要望は?宝石?それともドレス?」
笑顔なのに、全然目が笑っていなかった王太子。