第13章 救世主
「簡潔に説明いたします。団長率いる団は解体し、国に捕縛されました。追って沙汰が下りるでしょう。」
「そうですか。あのっ、団長の奥方はどうなるのですか?」
「爵位を没収され、一族共に罪を償うようになります。きっと、二度とエイリンと会うことはないでしょう。」
その事にホッと息を吐いた。
「ただ、先程も申しましたが、まだ羽虫がおります。もう暫くだけ、我が家で滞在していただきたい。窮屈な思いをさせてしまいますが、どうか私の願いを聞き届けていただきたい。」
「分かりました。でも、羽虫って?」
「あちこちにおりますから、少々とね?」
どうやら、話してくれない様だ。
「そうですか。それと・・・ルカさんのことは?」
「軍事訓練を騎士団と共に行っております。鍛え直すのだと自ら申して参りましたから、その意を汲む事に致しました。」
「そ、そうですか。」
「寂しいですか?妬けますね、他の男のことを心配するとは。私だけでは物足りないのでしょうか。」
近い、顔が近い。そして分かりやすいくらいに拗ねている。
「私だけを見て欲しいと言うのは、我儘なのでしょうか。」
キラキラした瞳が潤んでいる様に見える。そんなアンドリューさんに、自分からキスした。
「我儘じゃありませんから。」
「良かった・・・。そう言えば、手際の良さに驚くことがあったのですが・・・。あのケルンという男ですが、既に結婚承諾書の書類を用意していました。何方かというと、エイリンを欲しがっていたのはあの男の方だった様ですね。サインもされておりましたから。」
何それ、怖っ!!どうせなら、私も殴られた分の倍くらいは殴り返したかった。
「あの・・・私にご褒美を頂けませんか?」
「えっ?あ、何がいいですか?」
「私はエイリンが欲しいです。」
「えっ!!?」
驚き顔が真っ赤に一瞬で染まる。
「私の家族になって欲しい。不安なのです。私は平民ですから、恋人同士とはいえ・・・身分ある貴族からエイリンを望まれたら・・・きっと、私は国を捨てエイリンを拉致し一生私の傍でっ」
私は慌ててアンドリューさんの口を手で塞いだ。
「アンドリューさんが貴族という括りを良く思っていない事は聞いています。ですが、そんな簡単に国を捨てるなんてことを言わないでください。」
「ならば、私をエイリンの傍に置いてくれますか?」