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清算は断罪と共に

第13章 救世主


朝、いつもの様に目覚めるとベッドの横に椅子を置きそこでアンドリューさんが転寝していた。少し疲れた様に見えるその顔に、私はそっと触れた。

「すみません・・・どうやら、寝てしまっていた様ですね。おはようございます、エイリン。」
「おはようございます、アンドリューさん。それと、お帰りなさい。」
「只今戻りました。」

触れるだけのキスをしては、私たちは視線を合わせた。

「全て終わらせました。まぁ、まだ羽虫はおりますが、直に対処致しましょう。それと、一つお願いがあるのですが。」
「何ですか?」
「あの団員の誰かから、何か頂いたりはしていませんか?」

その問いかけに思案し、私は思い出した。確か、ハンカチを貰った。

「このハンカチを。」
「やはり、不愉快な感じをしていたのはこれが原因でしたか。大変申し上げにくいのですが・・・このハンカチを処分しても構いませんか?」
「え?あ、はい。いいですけど・・・これが、どうかしましたか?」

確かに、あの団員の一人から貰ったもの。でも、不愉快な感じって何だろう?

「この刺繍糸には、魔力が籠っています。探知魔法で、持ち主の所在が分かる様になっています。」
「えっ、そんな・・・。」
「気付いてはおりましたが、エイリンが大切にしているものだったらと思うと言えませんでした。」
「すみません・・・全然、気付きませんでした。」

ハンカチは火の魔法で綺麗に燃やし尽くされた。

「代わりに私が贈りましょう。」
「い、いえ、大丈夫です。気にしないでください。」
「怒っているのですか?」
「いいえ。アンドリューさんは私を守ってくれたのです。感謝しこそすれ、怒ってなどいません。本当にありがとうございました。」

アンドリューさんに抱き付いてみれば、そっと抱き締め返してくれた。

「エイリンは温かいですね。ホッとします。」
「私もアンドリューさんといると安心します。」
「その様に言っていただけて嬉しいです。」

触れるだけのキスを繰り返した後、アンドリューさんと食事をしてから執務室へと向かった。執務室には、私たち二人だけだ。

ルカさんたちには、もう事情を説明したらしい。緊張する私の手を握り、揃ってソファーに腰を下ろした。



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