第12章 薬と恋、時々拉致
「お腹をすかせていませんか?飲み物も用意しておりますが。」
「そう言われたら・・・。」
飲まず食わずでアンドリューさんと睦あっていた私。怠い身体を起こしてくれ、甲斐甲斐しくお世話してくれるアンドリューさん。
「もうお腹いっぱいです。ありがとうございました。」
「いえ、貴女の為なら何でもない事です。愛していますよ、私のエイリン。今晩は、このまま休んでください。」
「アンドリューさんは、傍に居て下さいますか?」
「えぇ、勿論。おやすみなさいませ。」
アンドリューさんの胸の中に抱かれたまま、私は再び目を閉じた。疲れで熟睡した私は、辺りが明るくなった頃に目を覚ました。
「おはようございます。私のエイリン。」
「お、おはようございます。」
視線の先は、微笑むアンドリューさんの笑顔。
「朝の口付けをしても?」
小さく頷くと、触れるだけのキス。少し物足りなく思ってしまうのは、昨晩の情事が内容が濃いものだったから?
「物足りなく思ってしまいますね。恋人としてのキスをしても?」
どちらの熱か分からないほど、溶け合い抱き締められては唇を貪られた。そんなアンドリューさんに応えてしまう私だったのだけど。
朝食の後、アンドリューさんを見送ってから私は作業場で薬の製作に取り掛かった。
「なぁ・・・一体、どれだけ薬を作るつもりなんだ?」
ルカさんの言葉に、私は浮かれていたのだと自覚した。
「あ、あははは。」
「でもさ・・・。」
「はい?」
「ウチのボスのこと、受け入れてくれてありがとな。」
照れ臭そうにそう言ったルカさん。
「白い交際でしたけど、私にも婚約者がいたんです。まぁ、私から破棄しましたけど、そんな私でもあんなに広い心で思ってくれる人だから・・・それに、アンドリューさんって一緒にいると何かホッとするんですよね。」
「それは本人に直接言ってくれ。ボスも色々あったお人だからさ・・・きっと、エイリンの言ってくれる言葉を凄く喜ぶと思う。」
「そうですね。」
この日作った薬は、効能が増されていたようで・・・何故か、割増で販売することが出来た。いつものお礼に、何か贈り物でもしようかな。
と、本人に聞いて見れば、お揃いのアクセサリーがいいなんて可愛い事を言われた。でも、アンドリューさんが逆に用意してくれてそれは全然可愛くなかった。