第12章 薬と恋、時々拉致
「ルカさん・・・これって、婚約する時とかに用意するものなのでは?」
「あ~、まぁ、ボスがそれくらい嬉しかったって事で何も言わずに受け取ればいいって。」
「他人事だと思って・・・。」
それに、この指輪はただの指輪じゃないはず。きっと、高価な魔道具なんだろうなぁ。
「じゃあ、私は私が出来る事でお返ししよう。」
「何するんだ?」
「そんなの決まってるわ。私は薬師だもの。いっぱい薬を作ってアンドリューさんにプレゼントする。」
「・・・そうか。ボスなら、何でも喜ぶだろうな。」
呆れた顔をされたけれど、私の取り得は薬を作ること。
「ってことで、恒例の護衛をお願いします。」
「あぁ、はいはい。薬草採取だな。だが、今回はノアが別件で出払っているから俺だけだ。」
「大丈夫です。信じてますから。」
「任せておけよ。」
そんな軽口を叩いてたのに、いつもの森はいつもと違っていて・・・意識の遠くで聞こえたのは、焦ったルカさんの声だった。
そのまま深い海に沈み込む様に私の意識は堕ちて行った。
ねぇ、アンドリューさん。次に私が目覚めた時に、傍にいてくれますか?人間不信になりそうだった私が、不思議と居心地よく感じられたあの場所に私は・・・。
そんな事を願っていたのに、無常にも誰かの怒鳴る声と鈍い痛みが身体を走った。薄っすら開いた視界に入って来た場所は、どこかの地下室。
小さな窓一つない薄暗いその部屋で、私は鎖に繋がれて石畳の上で寝ていた。そして、視界に入って来たのは・・・驚くほど変わらない笑顔を浮かべたあの人がいた。
「久しぶりだな、エイリン。勝手に逃げ出したから、心配していたんだ。あんな若造に囲われるなら、俺でも良かったんじゃないか?」
「あら、それは妬ける台詞だわ。」
「おいおい、妬くなよ。エイリンはいい金蔓なだけだ。」
抱き合い口付けを交わすその人は、私が慕っていたイリル団長とその奥方だった。