第12章 薬と恋、時々拉致
「私は私が許せないのです。貴女の白魚の様な美しく可憐な手に傷を付けてしまうなど・・・万死に値します。本当に本当に申し訳ござっ・・・。」
泣きそうなアンドリューさんを抱き締め、背を優しく撫でた。
「貴族の人なら、ここで責任をとか言うのでしょうけど・・・。」
「私は貴族ではありませんが・・・いえ、それは貴女の意に沿うものではないでしょう?」
「では、言ってくれないのですか?」
「えっ?い、言ってもいいのですか?こんな失態を犯す私などがその言葉を・・・。」
消えてしまいそう・・・そう思った。
「ただ一つだけ、約束して欲しいことがあります。」
「どの様なことでしょう?貴女が望むのであれば、何でも聞き入れましょう。」
「私は浮気をする人は嫌いです。」
おや?アンドリューさんがキョトンとした顔をしています。
「浮気・・・ですか?私は、貴女が好きなのですよ?」
「アンドリューさんは、このままの間柄でいいと言われるのならそう仰ってください。」
私の言葉の意味を理解したらしいアンドリューさんの顔が、パアッと明るくなった。
「あぁ、貴女は私の女神だ。こんな私に愛を紡ぐことを許していただけるなんて。お約束します。一生掛けて貴女を愛し続ける事を誓います。」
「アンドリューさん・・・それでは、プロポーズです。」
またしても、キョトンとするアンドリューさん。
「私が相手ではお嫌ですか?私は貴女が貴女だけが恋しいのです。」
誰よ、美形を見慣れたって言ったの・・・私だったわ。壊れ物を扱うかの様に私を抱き締めるアンドリューさんは、熱を孕んだ瞳で私を見た。
「愛しています。私の全てを掛けて貴女を愛します。」
その瞳に捕らわれて気付いた。逃げられない・・・。
重なり合った唇は、甘さと熱を含み・・・そのまま、この腕の中で身を委ねてしまった。何処までも快楽を与えられる私は、気付いた時には意識を手離していた。
真夜中だった。
アンドリューさんの腕の中で目覚めた私。
「気分はいかがですか?」
「き、気分は問題ないのですけど・・・。」
「すみません・・・少々、羽目を外してしまった様です。」
全然、少々ではなかったのですが?でも、このタイミングで情を交わした事を後悔することはありませんでした。だって、私を見る瞳はとても優しくて甘さを含ませていたのだから。