第10章 落ちた聖人
予定は計画通りに進んだ。紹介して貰っていた仲間に斡旋され、俺は暫しの欲の限りを吐き出した。段々と汚れていく俺だったが、気付かないフリだ。
エイリンを手に入れれば、全て元通り。それを信じて、俺はエイリンの情報を集め出した。そして、それは予想より早くに手に入った。
決まった日時にギルドに薬を売りに来るのだと、教えられて俺は喜びを隠せなかった。だがしかし、手練れの護衛が付いていると言う。
町の中で騒動を起こすのは難しい。ならば、今でも薬を作っているのなら必ず薬草を採取しに出かけているはず。その時を狙って襲えばいい。
幾ら手練れとは言え、大勢で襲えば問題ないだろう。ここは慎重に・・・。きっと、数日で採取のタイミングも情報が得られるだろう。
可能なら、住居を知る事が出来たら・・・そう思っていたら、ギルドでエイリンを見掛けた仲間がいた。でも、何処で住んでいるのか後を尾行したが急に姿が消えたらしい。
全く以って忌々しい。早く俺の元に戻ればいいものを。今日とて、町で知り合った女を都合よく扱い最後は売り払う事を繰り返した。
俺は俺の容姿がいいことを知っている。羽振りよく見せれば、簡単に女は手に入った。そして、面白い様にお金が増えていく。
そして、十日目のこと。エイリンが森に薬草を採取に出掛ける情報を得られた。やっとだ、やっとエイリンをこの腕に抱ける。
俺は前祝いとばかりに、つるんでいる男たちに酒を振舞った。もう計画も達成されたも同然だ。この時の俺はそう信じて疑いもしなかった。
何だよ・・・何であんな恐ろしいヤツが、エイリンをエイリンの傍にいるんだよ。それに、エイリンは俺が好きなんだろう?何で、そんな嫌そうな目を俺に向けるんだよ。
恋する相手がわざわざ迎えに来てやったんだぞ?だったら、諸手を上げて喜んで俺を受け入れろよ。でも、俺は寛大だから許してやる。
あぁ、そうか。そいつに騙されているんだな?人のいいエイリンだもんな。それなら仕方ない。でも、俺の元に戻って来たら少しくらいお仕置きしてもいいよな?
心配しなくても、たくさん愛してやる。でも、俺の言う通りにしないと・・・抱いた後、売ってしまうかもしれないぞ。それは嫌だろう?
だから、俺だけの言い分を聞いていればいいんだよ。今までそうだった様にさ。