第9章 恩返し
その後の盗賊たちはというと、騎士団が捕縛して連行していったとアンドリューさんから聞いた。事情聴取は、身体から痺れが抜けるまで無理だったらしい。
それと、あの貴重で希少な薬草の花の蜜は、蜂の魔物に取っても貴重で希少とのこと。豆情報として、その薬草の蜜をたくさん接種した蜂蜜はとっても美味しくて体力増幅にもなると教えて貰った。
でも、あの蜂さんに蜂蜜を下さいなんて言ったら、襲われかねない。それに、無用な争いはしたくない。無理強いはしない様にしよう。
さて、そろそろ準備していた酵母が出来上がった頃だろう。これで、フワフワのパンが焼ける。私がお世話になってからというもの、朝と夕食は一緒にアンドリューさんと食べる様になった。
過保護だけど、必要以上に関わって来ないし恩着せがましくもない。ずっと、ここにいたのでは?と錯覚しそうになるほど馴染めていると自負している。
先日の盗賊たちが、罰則として強制労働の刑に処されたと聞いてから、私は三度目の森へと来ていた。採取場所は、少しずつ変えている。
今回のお題は、黄色い果物の歌詞である。冬のこたつとお供のあの果実だ。歌詞は不明瞭なので、鼻歌である。
「エイリン、こっちへ。」
ルカさんに連れられて向かった先には、弱っている蜂がいた。木の枝に止まっているが、何処となく弱弱しく見える。
今回の採取の中には、特別な薬草はない。でも、その集大成は鞄に入っている。刺激しないようにそっと近づき、魔物に使ってもいいのか分からないけれど薬を飲ませてみた。
「あれ?何か、光ってる?」
弱っていた蜂は一回り大きくなり、元気にもなったらしい。
「良かった、元気になったみたいで。気を付けて帰るんだよ。またね。」
ルカさんたちには呆れられたが、元気になった蜂さんに手を振った。その後、帰ろうとした頃、蜂の群れが飛んできた。見分けは付かないが、その中に一回り大きな蜂がいたのでさっきの蜂かもしれないと思い至った。
ルカさんたちは緊迫した表情だったけれど、一回り大きな蜂が抱えているものを見て目が釘付けになった。
「それって、結晶化した蜂蜜?」
黄金色のそれは、神々しいばかりに輝いていた。傍にまで来た蜂さんがそれを落とし、私は慌ててそれを両手で受け止めた。
そして、前回同様私の上を二回回ってから森の奥へと消えて行った。