第9章 恩返し
○○の恩返し…そんな童話があった気がする。確かに私は人の命を助けた。でも、同じくらい・・・ううん、それ以上の恩を返してもらった。
ローウェン様は、多忙だとかで国に帰ったらしい。それでも、良い関係を築けた様でアンドリューさんは喜んでいた。ヴィーナス国は農作物が豊かで穏やかな国の様らしい。
そう、あの日から数日後。またしても、私は森に採取に訪れていた。前回と場所を変えての採取だったからか、また違った希少な薬草を採取することが出来た。
今日の鼻歌のお題は、お星さまが出て来る歌である。少し離れた場所では、ルカさんとノアさんが組手の練習をしている。剣術は不慮の事故で剣が飛んで来たら危険なので辞退して貰った。
その選択がいけなかったのか、またしても静かな森の中での歌がいけなかったのか、今回は魔物ではなく人。五人組の盗賊らしき見た目のゴロツキ。
さっきから、私を捕まえて売り捌くとかその前に味見するとか散々なことばかり言っている。更に、襲って来たのは盗賊だけではなかった。
先日の蜂の集団である。私は咄嗟に、希少な薬草を掲げた。すると、一匹の蜂が前回と同じくその薬草を抱え込む。それを合図に、盗賊たちに襲い掛かった蜂たち。
私と薬草を抱えた他の蜂より少し大きい蜂は、その光景を見ているだけ。チラッと傍にいる蜂を見ると、目が合った気がした。
騒がしさに気付いた護衛二人が駆け寄って来たが、私はそのまま戦闘に参加しないようにして貰う。多数の蜂にアチコチ刺されている盗賊たちは、更に盗賊らしい風貌になっていく。ルカさんたちは、ただ茫然とその光景を見ているのみ。
そう強くなかったのか、盗賊たちはその場に撃沈した。後から聞いたのだけど、蜂の針には毒があるらしい。刺されると暫くは動けなくなるほどの毒だと教えてくれた。
「ありがとう、蜂さんたち。もう一つ、お礼するね。」
希少な薬草をサービスでもう一つ差し出せば別の蜂が抱えては私の頭上を二周してから森の中に消えて行った。
「エイリンは・・・魔物使いだったのか?」
そう呟いたのは、ノアさんだった。堅物で真面目が服を着ている様な人だと言われる人だ。
「よく見れば、蜂さんも可愛いですよね。」
「「可愛くねー!!」」
ハモって私の意見を反対された。その夜も、アンドリューさんが過保護だったのは言うまでもない。