第8章 計画
「あぁ、それと今朝報告された事だけど。血眼になって、エイリンを探しているらしいよ。あの下半身男が。」
何でもない様に、そう言ったのは王太子。
「逃げたのは、エイリンが初めてですからね。」
「もう一つ、新情報だけど。その王太子、婚約者にせっつかれて結婚するんだって。どうするんだろうね、あの離宮にいる愛人たち。近い未来には収容過剰になるって言うし。それに、子が大勢いるんだけど、王族にはなれないんだろうな。」
「子が大勢?」
「あの離宮って、もう七年くらいになるんじゃなかったかな。七年もあればねぇ?」
あ~、何か本当に頭が痛い。
「改めて、助けて下さってありがとうございました。」
「決めたのはリューだよ。」
「えっ?」
「私は何も指示していない。賛成もしていないし反対もしていない。」
立場的にとかだろうか。相手は、一国の王太子だから。
「その為の、私の存在でしょうに。薬師はこの世界には貴重な存在です。さて、今後のことですがどうされますか?」
「・・・少し考える時間が欲しいです。」
「それもそうですね。では、この家をお使い下さい。普段、私は城にいますし、年若い女性がいれば家の中も明るくなりましょうから。必要なものがあれば、テイラーに言ってください。それから、薬を作ると仰るのならお好きにどうぞ。薬草採取なら、ルカかノアを護衛にお使いください。」
その後は、二人揃ってお城へと向かわれた。残された私は、テイラーさんに声を掛けては仕事を手伝った。じっとしているより、動いていた方が楽だった。
誰もが親切にしてくれて、パンクしそうだった私の心も落ち着いて来た。数日後、私はルカさんと共に近くの森へと薬草を採取に出向いた。
「そう大きい魔物はいないけれど、あまり遠くに行かない様にな。それと、知らない人には付いて行ったらダメだぞ。」
ルカさんは、面倒見のいいお兄さんみたいな人だった。言葉はぶっきらぼうだけど、冷たい人ではない。
アース国に来て初めての外出は、私の気持ちを軽くさせた。囲われた訳ではないのだと、安心出来たのもある。それに、アンドリューさんは、至って紳士で言葉遣いも丁寧。
たまに、お菓子を差し入れしてくれる。貰ったからというけれど、わざわざ買ったものだとテイラーさんが内緒話しをしてくれてホッコリした。