第8章 計画
でも、森で鼻歌交りだったのがいけなかったのか、歌っていた歌詞がいけなかったのか・・・気付いたら、周りに蜂がいた。それも、元の世界の10倍ほどの大きさである。因みに、周りにお池はない。
蜂は私が手にしている、花を見ている様だ。恐々だが、差し出して見ると貰えたと思ったのか、ガシッと花を抱き締めては飛んで行ってしまった。
「貴重な花が咲く薬草だったんだけどなぁ・・・まぁ、また見つかるかもしれないし、襲われなかっただけ良かったと思おう。」
日が傾いて来た頃、何処からともなくルカさんが現れて帰る時間だと声を掛けられた。採取に行く時に、アンドリューさんから貰ったのは魔法鞄。たくさん入るし、時間も停止したまま。要は枯れないってこと。
貰ったと言ったけれど、借りているくらいにしか思っていない。だって、魔法鞄は高価だと知っているから。
家路へと向かう途中、私はさっきの蜂の話しをした。目を見開いて、驚いた顔をしたルカさん。
「よく襲われなかったな。危険な魔物なんだぞ。」
「花が咲く薬草を差し出したら、持って帰ってしまいましたよ?貴重な薬草だったから、少し残念だったのですけど襲われなかったから良かったのかなって・・・。」
「遭遇して、襲われなかったヤツなんて聞いたことが無い。本当に運が良かった。でも、次は俺を直ぐに呼べ。いいな?」
切羽詰まった顔のルカさんに、私は頷くことしか出来なかった。薬草を渡すと、何となくだけど嬉しそうな感じがしたし、私の頭の上で二回クルクルと回ってから何処かに飛んで行ったのだけど。
まぁ、次から気を付けよう。その夜、蜂の魔物のことを聞いたアンドリューさんが、私の周りを回っては怪我の有無を確認していた。
今回のことで、次はノアさんも連れて行くようにと言われてしまった。アンドリューさんって、ちょっと過保護。
薬は作らせて貰えたので、幾つか作り上げた。作ったからと言って、そう簡単に売ったりは出来ない。さて、どうしようと思っていると、アンドリューさんがギルドに登録してくれた。
薬の効能は規定より良いものだったらしく、今後、売ることが出来る様になった。ただ、最初の一つ目はアンドリューさんにお礼を兼ねて渡すと、凄く喜んでくれた。
「大切にする」と言われたけれど、出来るなら使うべきところで使って欲しい。