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清算は断罪と共に

第7章 水面下


「凄い・・・ヨゼフさんの魔法って本当に凄いです!!」

少々興奮気味で口にすれば、満更でもない顔。

「ありがとよ。さ、ここなら少し休めるだろう。小屋の中はそう広くはないが、雨風は凌げ・・・えっ!?ど、どうして貴方が!!!」

小屋の中から出て来たのは、長い黒髪を一つに束ねたこれまたイケメンがいた。まさか、この人も何処かの王子様・・・とか?

「遅いから迎えに来ただけですよ。」

丁寧で柔らかい口調なのだけど、空気が冷えたのは気のせいではないはず。

「貴女が、エイリンですか。初めまして、私はアンドリューと申します。平民出なので、姓はありません。」
「えっ、王子様ではないのですか?」

つい漏れてしまった声。慌てて口を塞ぐ。

「フフ、私が王子様と勘違いなさるとは光栄ですね。今日のところはお疲れでしょうし、詳しい話しは明日にでも。ご心配なさらなくとも、あの下半身男と違い私は女性を囲う趣味はありませんので。」

カラフルな髪色の世界の中、見慣れた黒髪は私の気持ちを落ち着かせた。民族意識と言うか何と言うか。と言っても、今の私の髪色は淡いスミレ色だけど。

「で、何をしているのです?国に帰りますよ。」
「えっ、まさかこのまま国に飛べと仰るのですか?」

鬼だ悪魔だとヨゼフさんが言ったが、アンドリューさんが一瞥しただけで黙り込んだ。王子様ではなかったけれど、それなりに立場のある人なのだろう。うん、怒らせない様にしよう。

「あ、あの・・・私は事情さえ説明して頂けたら、後は自分で何とかしますから。」
「なる訳がないでしょう?」

それは冷たさなど感じなかったが、私の心に刺さる言葉だった。目の前まで近づいて来ると、そのまま抱き締められた。

「そんな顔をなさっている貴女を、このまま捨て置くなど出来ません。泣きたい時は泣いていいのですよ。」

聖母かと思えるほど、優しい声だった。アンドリューさんは、泣き止むまで私の背を撫でてくれた。

「それと、貴女に会いたがっている人がいます。どうか、時間を作って頂きたい。」

こき使われて、国に到着したと同時に本当にそのまま倒れ込んだヨゼフさん。他の仲間に運ばれて行った。

アンドリューさんから紹介されたのは、あの時私が助けた王子様だった。すっかり元気になった様で安心した。でも、何故ここに?
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