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清算は断罪と共に

第1章 清算は旅の前に


「イリル団長、私が確認致します。」

魔法鞄から取り出した薬を机の上に並べた私は、ケルン副団長が確認してくれるのを待つ。

「エイリン、仕事の方はどうだ?」
「お蔭様で、何とか一人で生活出来るくらいには。」

そうだよ、一人で生活出来るくらいなんだよ。それなのに、いい所のお坊ちゃんだからセドリックは、一人くらい面倒を見るのは簡単なことだと思ってる。

「冴えない顔をしているが、何かあったのか?」
「えっ?あ、ちょっと・・・。」
「婚約指輪が無い事が理由か?」

流石、団長である。鋭いところを付かれた。

「セドリックから請われての縁談だっただろう?何かあったのか?」
「団長、うら若い女性を見る目付きではありませんよ。」

ケルン副団長が助け舟をだしてくれた。でも、私の言葉を待っている様子。仕方なく、私は経緯を話した。

「赤い髪色の貴族らしい女性?」

何やら、二人の表情が厳しいものになった。そして、二人が頷き合ったかと思えば、一枚の人相書きを見せられた。

「あっ、この人・・・。」
「この人相書きのことはここだけの事にして欲しい。それで、エイリンが会った女性に間違いなさそうだな。」
「はい。確かに、この女性でした。」

イリル団長は、その女性の素性を話してくれた。

隣国の高位の貴族の令嬢で、第三王子の婚約者だった。だが、王子は別の女性を傍に置き婚約者であった令嬢をないがしろにした。その結果、令嬢が王子の思い人を苛め抜き王子から婚約破棄されて国外追放となった。

元の世界では、よく聞いたことのある内容だ。そうか、その令嬢がこの町に来たと言うこと。いくばくかのお金は持たせて貰えたかもしれないけれど、贅沢しか知らない貴族の令嬢が我慢なんて出来るはずもない。

浮気した王子もどうかと思うし、だからと言って、セドリックに助けてもらって当たり前だと思っている令嬢もどうかと思う。更に言うと、それを私に丸投げするセドリックもおかしいとしか言いようがない。

「私も、国外に出ようかな・・・。」
「セドリックの家は、そこそこ大きいしこの町ではそれなりに権力もある家柄だ。今後のことを考えれば、エイリンに未練がないのならその方がいいかもしれないな。でも、いいのか?」
「エイリンとの縁談は、セドリックに強請られて纏まった様なもの。それなのに、恩を仇で返すなんて不届き者ですね。」
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