第6章 花を背負うとはこのこと
「それと、次の約束も貰えるかな?」
「次って何ですか?」
「町案内を兼ねた二人っきりのデートだよ。」
どうやら、デートだったらしい。
「次はもっと楽しい体験が出来ることを約束するよ。なんて、本当はただエイリンに会いたいだけ。一目惚れを私がするなんて想像もしていなかったけれど、今日のデートで増々エイリンのことを好きになったよ。」
笑顔で、何でもない様に言ってのけた王子様。
「好き?」
「好きだよ。」
セドリックとは婚約していたけれど、こんな風に想いを口にされたことはなかった。いつも、面倒を見ていた・・・そんな感覚だ。
「誰かと比べてる?」
おまけに、鋭い。
「ジンは王子様だから、婚約者とかいるのでは?」
「私はちゃんと恋をして愛を紡いだ相手と生涯を共にしたいと思ってる。だから、私に婚約者はいない。今の私はエイリンに夢中だから、頑張って口説いて婚約者になってもらう予定。」
私の頬に触れた柔らかい感触の後、私の顔は真っ赤になった。
「今のその表情も愛らしい。少しは時間を上げられるけれど、早く私に堕ちて欲しいかな。さ、名残り惜しいけれどそろそろ戻る時間だ。」
何だろう・・・こんな見目のいい人がやれば、全然寒くないし余計に美しく見える。手を繋いだままお爺ちゃんの店へと戻る。
「今日のデートの記念に。」
髪に刺してくれた髪飾りは、小物屋で私が見ていたものだ。後日買いに行こうと思っていた髪飾りをプレゼントされた。
「ありがとうございます、凄く嬉しい。」
「よく似合っているよ。それじゃ、明後日会おう。」
ジン様は一度振り返っては手を振ってくれた。相変わらずの花を背負って。
「戻りました。」
「エイリン、戻ったか。話しがあるから付いて来てくれ。」
奥の部屋でお爺ちゃんから聞かされたのは、お城に招待する書簡のことだった。いつ送ったのだろう?
「ワシは献上する用事があるから城に行く予定じゃったが、エイリンは嫌ではないのか?」
「嫌ではないですよ。内装とかも興味ありますし。」
「そ、そうか。それで、ジン様はどうじゃった?」
今日の事をお爺ちゃんに話した。勿論、好きだと言われた事も。お爺ちゃんは気遣わしそうに私を見た。
「怖くはなかったか?」
「怖い?そんな風に想わなかったよ。」
「そ、そうか。あぁ見えて、ジン様は怖いお人じゃからのう。」