第6章 花を背負うとはこのこと
怖いと言うより、全然真逆の人だった。
「これはこれは、本当にエイリンに骨抜きにされたんじゃのう。エイリンはジン様をどう思う?」
「どうって、相手は王子様だよ?」
「身分はそう重要視されん。」
意外な事実に驚く。
「お爺ちゃんはどう思う?」
「エイリンの気持ち一つじゃと言いたいが、ジン様なら反対はせんぞい。立派なお方じゃからのう。」
そっか、お爺ちゃんのお眼鏡には適う人なのね。私も一緒にいて楽しかったし、面倒は逆に見て貰ったくらいだ。
暫くは様子見と言うことで、話しは終わった。
そして約束当日。
お城の前で、ジンが待ってくれていた。馬車を降りる時、手を貸してくれ降ろしてくれた。
「ありがとうございます、ジン殿下。」
「約束を守ってくれて嬉しいよ。それに、今日の装いも愛らしい。」
ご機嫌である。今日はお城だから呼び捨ては禁止だ。今日の装いは、お爺ちゃんが見繕ってくれたワンピース。流石に、ドレスは分不相応だと思ったので辞退した。
お爺ちゃんは謁見の間に行ってしまい、私はその間ジン殿下にお城を案内して貰った。流石お城と言うことで、庭に咲き乱れる花々は圧巻だった。
お城の中は広くて、何処をどう歩いたのか分からないほどだった。そして、ジン殿下の私室でお茶とお菓子を頂いていると、慌ただしくお爺ちゃんが現れた。
「すみません、至急、知らせたいことが。」
「何があった?」
お爺ちゃんはジン殿下の前だと言うことで躊躇した様だったが、席を外そうとしない殿下に諦めた様子で私にこう言った。
「セドリックが店に来た。」
私は一瞬で血の気が引いた。もう、こんな場所にまで来たと言うの?どうして・・・。
「ジン様、無礼を承知でお願いしたい。どうか、エイリンを暫く傍に置いて下さらんか?」
「勿論、願ったり叶ったり。」
ジン殿下の返答は簡単なものだった。
「そんなご迷惑は・・・。」
「ダメじゃ、店に戻るのはワシは許さん。暫し、辛抱してくれ。ワシが何とかする。」
お爺ちゃんの真剣な眼差しに、私は了承するしか出来なかった。その後、お爺ちゃんは直ぐに店へと戻って行った。