第6章 花を背負うとはこのこと
「ただいま、戻りました。」
一目見て、あぁ、お爺ちゃんの孫だと分かった。皆がお爺ちゃんに似ている。
「いい所に戻った。食事が終わったら、エイリンに町案内をしてやってくれんかのう。」
「いいですよ。」
笑顔で快諾する好青年。前世の私と同世代だろうか。今の私は20歳になったばかり。因みに、前世では27歳だった。
お爺ちゃんもコバトさんも恰幅のいい見た目だけど、コトンさんはスラッとした見た目。でも、未来は・・・。
朝食の後は散策だと浮かれていた私だったのだけど、店先が何故か賑わしくなっていた。そして、食事している私たちのところに従業員の一人が現れた。
「お食事中に失礼します。ジン様がお見えになられました。」
私以外の誰もが驚いている。それから、お爺ちゃんとコバトさんは、何故か私を見た。
「おや、食事中だったのか。すまなかったな、折角の家族団らんの場に邪魔をして。」
どうやら、ジン様と言うのは昨日の美男子の名だったらしい。今日も、立派に花を背負っている。エフェクト満載である。
勝手知ったる他人の家らしく、いきなり現れた事に対しては何も言わなかった。
「ジン様・・・聊か、戯れが過ぎませんか?」
「美人薄命だと言うだろう?」
「だからと言って、こんな風に現れれば・・・。」
「美しい薔薇には棘があると?」
一体、さっきから何の話しをしているのだろう?私は部外者の気分で二人の会話を聞いていた。
「お爺ちゃん、私は席を外した方がいい?」
コソッと声を掛ければ、美男子ことジン様が私に近付いて来た。あ、何か覚えのある爽やかないい香り・・・。
「二度目まして。私はジン=マーキュリー。どうぞ、よろしく。」
先日の殿下同様、私の手を取り甲にキスした。そして、身を屈めては私の視線と合わせて来た。
「エイリンと申します。」
「名前も愛らしいんだな。昨日は、女神が迷い込んで来たのかと思ったよ。」
女神っ!!?お爺ちゃんに助けを求めたが、諦めが混ざった目を向けられた。そうか、この人はこれが素なのか。なので、私は・・・
「冗談がお好きなのですね。」
ぶった切っておいた。「勇者だ・・・」なんて声が聞こえて来たけれど、誰にでも愛想のいい人は御免被りたい。そう思っていたのに、どうやら私が違った認識をしていたらしい。