第6章 花を背負うとはこのこと
お爺ちゃんが住む町は、マーキュリー国の王都だった。元々住んでいた町が町だと言うのが烏滸がましい程の大きな町・・・いや、王都だった。
早いと言う理由で鳥便で先に到着を知らせていたらしく、店の従業員たちが揃ってお出迎えしてくれた。が、その中にはお爺ちゃんの一番目の息子はいなかったらしい。
今回も従業員の一人に案内されて、私は部屋に向かった。向かう途中、開いていた扉があり何気なく中に目を向けた私。
そんな私に気付いた中にいた二人の片割れの人が、私に向かって微笑みを見せた。
(あ、背景に花が見える・・・エフェクト?)
美しく長い水色の髪を緩く一纏めにした、それはそれは綺麗な男性がいた。私は直ぐに我に戻り、会釈だけをしてその場から立ち去った。
あの殿下も如何にも王子らしい見目だったけれど、さっきの人も王子だと言っても納得できる人だったなぁなんてことを思い描いていた。
そして、今回の私は部屋に入るなり、窓から見える景色を眺めていた。が、やはり旅の疲れからか意識が飛びそうになってきた。
その後、ベッドの上で丸くなって目を閉じた私。一年前の私は、こんな風に毎日が不安でいつも何かから守る様に眠っていた。
そんな時、優しい感触が頭に触れた気がした。鼻を擽る爽やかな香りと、低く甘い声は私の意識を深い場所へと誘った。
「・・・おやすみ。また。」
次に目覚めた時は、翌朝だった。どうやら、余程疲れていたらしくそのまま寝かせてくれていたらしい。
「おはよう、お爺ちゃん。あ、もうその呼び方は可笑しいかな。」
「構わんぞい。ずっと、ワシはエイリンのお爺ちゃんでいいからのう。」
「ありがとう。」
この時になって、お爺ちゃんの一番目の息子であるコバトさんを紹介された。そう言えば、昨日あの部屋にいたもう片割れの人だ。
「昨日は不躾に部屋を見てしまってごめんなさい。」
「全然構わないよ。それより、父さんを助けてくれて本当にありがとう。」
ここでも、お爺ちゃんは大事に思われている様だ。
「父さんがエイリンの後継者になると言っているから、甘えればいいよ。俺も賛成する。」
「そうじゃ、コトンは何処じゃ?エイリンの町案内をやって欲しいのじゃが。」
「コトンなら早朝の配達に。直に戻るでしょう。」
コトン?誰?名前からして、一族?