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清算は断罪と共に

第5章 拾った権力者


そう思っていたのだけど・・・思った半日で目覚めることは無かった。余程、疲れていたのかもしれない。それでも、肉付きがいい様だから、食べる事に困っていた訳ではなさそう。

ま、その内意識も戻るでしょ。なんて安易に考えていたら、急に首に腕を回され捕獲された。首元にはナイフが見える。

あぁ、目覚めたのか。思ったより、私は冷静だった。

「馬車を止めろ。」

私はそのナイフに首を近付け、ピリッとした痛みを感じた。慌てたその男性はナイフを首から外した。

「な、何をっ!?」
「お爺ちゃん、殿下が目覚めたみたいだよ~。」

間延びする言葉でお爺ちゃんに声を掛ければ、馬車が止まった。そして、荷台へと姿を現わせたお爺ちゃんを見て、殿下は目を見開いた。

「コリス殿か?」
「事情を説明するので、ワシの孫娘を離して下さいませんか?」
「あ、あぁ、分かった。」

お爺ちゃんの言葉で、私は腕から逃れられた。が、私の首にある傷にお爺ちゃんは目を鋭くした。

「怪我をしたのか?」
「・・・すまない。」

苦い顔をしては、殿下が謝罪した。

「貸し一つですぞい。」
「分かりました。」

殿下なのに、腰は低いのだなぁなんて呑気に考えていた。

お爺ちゃんは森の入り口付近に馬車を止め、休憩を取ることにした。説明とは言ったものの、ただ木陰で倒れている殿下を見つけて回収したとしか言えない。

「毒を受けていたのですが、コリス殿が毒消しを?」
「いいえ、薬師の孫娘が毒消しを提供しました。」
「薬師?そうか、それなのに俺は恩人に何たることを・・・。重ね重ねすまなかった。」
「・・・。」

私は無言だった。その事で、殿下は私が怒っているのではと思い至ったらしい。

「国に着いたら、それ相応の謝罪をする。本当に申し訳なかった。」
「国には行きませんし、謝罪は頂いたので結構です。」
「えっ、国に行かない?」

目覚めたのだし最寄の町で下車して貰ったら、行き先は元のお爺ちゃんの住む町に変更だ。

「ヴィーナス国に向かっていたのではないのですか?」

お爺ちゃんに聞いている殿下だったが、さっきから目は私の首に向いている。

「ワシの住む町に向かう途中で殿下をお助け致しましたので、殿下に問題がないのであれば行き先は変更したいですぞい。」

良かった、私と同じ考えだった。
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