第4章 生まれた病と闇
翌朝、文句ばかりだったから、早々に馬車を出立させた。きっと、直に追いつけるだろう。エイリンを見つけたら、何を言おう?
まず、優しく抱き締めれば機嫌も直るかな?ひょっとしたら、あんなことをしてしまったのを後悔しているかもしれない。そうしたら、俺はあの女の子の面倒を見れば許してあげると言えばいい。
その後はジュピターに戻って、エイリンが俺の父さんに謝罪すれば何もかも上手くいくはず。後少しの辛抱だ。
俺が迎えに行くの待っているはずだ。一人で泣いているかもしれない。でも、今回俺が許したことによって、今後は俺の言うことを何でも聞くだろう。
エイリンだって、その方がいいはずだ。人助けなんだから、悪いことじゃない。あの女の子との事を誤解しているようだから、そこのところもちゃんと言い聞かせよう。
あぁ、そうだ。あのイリル団長がいる騎士団へとの付き合いは止めさせよう。安価で納めているから、生活が厳しいんだ。それに、あの人はエイリンに気がある様に見える。本当に気持ち悪い。
エイリンは俺の婚約者だ。誰にも譲ったりしない。エイリンも、俺の言うことだけを聞いておけば幸せだろう。そう決まっている。
そう思っていたのに、俺がマースの町に到着した時には、エイリンは船で対岸の国に出立した後だった。あんなに頑張って馬車を走らせたのに、あの女の子の我儘で予定より多くの休憩をしたのが間に合わなかった原因だ。
エイリンが共にいる商人の経営する支店で、情報を得ようとしたけれど何も得られなかった。急ぐ様に到着した翌日には、マースを出たのだと聞かされただけ。
この時も、あの騎士と同じだった。この支店の店長と話せたのだけど、俺を歓迎してくれる表情には見えなかった。一体、俺が何をしたって言うんだ。本当に気分が悪い。
それなりに資金は持っているけれど、そう贅沢は出来ない。翌日の乗船券の為に、今回は安い宿を取ることにした。しかし、この時もあの女の子は我儘放題のまま。
そして、この時の俺は少々苛立っていたのだと思う。棘のある言葉しか口にしない女の子に腹が立ち、思わず言い返してしまった。
それが切っ掛けだった。女の子の機嫌は収まるどころか、輪を掛けて偉そうで高飛車で俺を罵って来たのだ。そう・・・つい、魔が差した。
気付いたら、女の子はその場に倒れ込んでいた。そして、俺の右手は鈍い痛みを感じた。