第3章 川沿いの町で
どれくらい眠っていただろうか。さっきの女性に呼ばれて、お爺ちゃんがいるところに連れられて行った。どうやら外で町の美味しいものを食べるらしく、一緒に連れて行ってくれることになった。
コトラさんと三人のお出掛け。お爺ちゃんに町を案内してもらいながら、ある一件の食事処に入った。おススメを注文して貰っては、お腹をすかせた私はワクワクしながら待ち侘びていた。
「エイリン、着いて早々なんじゃが明日の昼には船に乗船して出立する事になった。」
「何かあったの?」
「さっき、イリル団長から鳥便で文が届いた。」
見慣れたイリル団長の文字が並んだ文を読ませてくれた私は、書かれた内容に驚愕せざるを得なかった。
「家から追い出されて、私を追って来てる?それも、あの女性を連れて?」
「大方、あの嬢ちゃんに吹き込まれてエイリンを連れ戻せば何とかなると思っているんじゃろうな。しっかり倅を躾んから、こんなことになるんじゃろ。」
お爺ちゃんの見立てに、私は眩暈しそうになった。
「お爺ちゃんにこれ以上迷惑は掛けられないわ。私一人で乗船するから、お爺ちゃんはゆっくりしてて。」
「明日の用意なら急ピッチでやっとるから、何の問題もないぞい。ワシを薄情者にせんでくれ。ちゃんと礼を尽くさせて欲しいんじゃよ。」
「お爺ちゃん・・・ありがとう。本当は少し不安だったの。でも、無理はしないでね?」
あの時頭を撫でてくれたイリル団長の様に、お爺ちゃんも優し気な眼差しで頭を撫でてくれた。みんな優しく泣きそうになる。
「未練はないのかい?」
「優しいだけじゃダメだって今回学んだわ。」
コトラさんまで気遣ってくれる。
「乗船してしまえば、後はゆっくり出来るじゃろう。折角のマースの町案内が出来んかったのが残念じゃが、ワシの住む町も中々のもんじゃから、それで妥協してくれ。」
「妥協だなんて。お爺ちゃんの住む町もきっと素晴らしいと思うから、楽しみにしてるわ。」
話しの後、料理は大きな川沿いだからか川海老の炒め物など美味しい煮込みなども食べられて私は満足だった。満腹で店に戻りお風呂にも入れて、その夜はゆっくりと身体を休められた。
翌日の昼。お爺ちゃんに声を掛けられ、私たちは大きな船に乗船した。船は直ぐに港を出立し、後から乗り込んで来た人の中にセドリックたちの姿が無かったことにホッとしたのだった。