第3章 川沿いの町で
「餞別する立場が反対な気がするが・・・ありがたく頂いておく。そうだ、代わりにこれを。」
差し出されたのは、何故かフリルのついたハンカチ。きっと、ルダンさんから押し付けられたものだろう。
「俺はこんな可愛らしいもの使わないからな。きっと、ルダンもいいって言ってくれる。だから、持ってってくれ。」
「分かりました。有難く頂いておきます。」
「それと、さっきのヤツらだが危険だから近寄らない様にな。俺たちが目を光らせておくが、自身でも気を付けてくれ。」
私はホークスさんにお礼を言っては、お爺ちゃんの元へと戻った。皆の輪に戻りホッとする。
「お爺ちゃん疲れてない?肩でも揉もうか?」
「エイリンは優しいのう。他の孫はこんな風に気遣ってくれんと言うのに。嬉しくて涙が出そうじゃわい。それに、たまに肩叩きなんてしようものなら、親の仇かの様な馬鹿力で肩が壊れるかと思ったぞい。」
そんな事を言いつつも、大事に思っているのが分かる。優しい目をしていたお爺ちゃん。
「あぁ、エイリン。安全とは言え、他の場所に比べてってだけじゃから一人で出歩くのは禁止じゃ。」
どうやら、さっきの事がバレていたらしい。流石、お爺ちゃんだ。では、私は何をしよう?
「そろそろ日が暮れるから、夕食の準備を手伝って来るね。」
「あぁ、そうしてくれ。ワシは打ち合わせがあるからちょっくら行ってくるぞい。」
炊事場には、お爺ちゃんのお店の番頭さん的存在のコトラさん(この名前も何か可愛い)に声を掛けた。お爺ちゃんとは付き合いが長くお爺ちゃんに次いで高齢の男性だ。
「コトラさん、手伝います。」
「あぁ、悪いね。じゃあ、この串焼きを見ててくれ。」
「分かりました。」
商人だけあって、味付けのレパートリーもそれなりに豊富。コトラさんは汁物の味を見ていた。やがて、どこからかともなくお米の炊ける匂いがしては、食事の時間となった。
商人の人員は全員で八人+私。みんな優しくしてくれ、大所帯の食事は楽しい。いつも一人だったから、何かこういうのが懐かしく感じる。
食事が終わり後片付けをしていると、お爺ちゃんが声を掛けてきた。
「馬車を移動したから、付いて来てくれ。」
「移動したって・・・。」
「安全の為じゃ。」
ホークスさんのお陰で、騎士団のテント近くで休めることとなった。