第19章 欲しいもの
承諾書は通常通りに受諾された。これで私は事実上リューさんの家族になった。ノーチェ様からもお祝いをされ、式は迅速に行われることになった。
新作で売り出すと情報を得たドレスを力業で手に入れたリューさんは、それを惜しみなく私に婚儀での衣装だとプレゼントしてくれた。
どこぞの貴族が着るであろう素晴らしいそのウエディングドレスを、お城に勤める侍女さんたちを斡旋されて着飾らせられ挑んだ結婚式。
ドレス姿の私を見て、綺麗な涙を一滴流したリューさん。女の私が流す涙より美しかった。そして、リューさんのタキシード姿も見目麗しかった。
招待客は、ごく一部の知人。そして、この中にいたのはリューさんの一族。両親は田舎でひっそりと暮らしているらしい。その方が性に合っているのだと、笑って話してくれた。
後はリューさんのお兄さん家族。美人の奥さんに可愛い女の子の家族は幸せそのものに見えた。薬師見習いの四人も参列してくれてお祝いしてくれた。
その中に混ざって、ノーチェ様もいたことは暗黙の了解の出来事だった。結婚式の後は、初夜があると言う訳で・・・。
日頃から肌を重ねていた私たちに、今更だと思うところだけど・・・ノーチェ様が、別荘の一つを貸し出してくれた。山間部にある川沿いに建つ屋敷だった。
夏休みの時には、リューさんもここにお呼ばれして休暇を楽しんだことがあったらしい。そんな思いで話しをしながら、リューさんのお願いで私からキスをした・・・のが、一時間前。
意味も分からず安易に受けてしまった私は、リューさんの変化に疑問を感じていた。
「リューさん?」
気怠そうな眼差しをするリューさんに声を掛ければ、見惚れてしまう程の微笑みを見せられた。
「正しい使い方なのか分からないが・・・エイリンの体液と共に摂取すると、効能が高まる様だ。」
何処からどうツッコめばいいのか分からない。
「どういう意味ですか?」
「エイリンの作った媚薬、こんな私になるのだな・・・もう、今すぐにでもエイリンを抱き潰したくて仕方ない。」
「えっ?」
「エイリン、私に抱き潰させてくれ。もう、愛したくて・・・苦しくて・・・。」
私は、何ってものをリューさんに渡してしまったのだろうと思った。気怠さのある熱の籠った瞳は色気を帯び、どんな人でも誑し込まれそう。
そして、勿論、私もそうな訳で・・・。