第19章 欲しいもの
リューさんが暴走し、何やら不穏な言葉を吐いたのでキスして黙らせた。
「落ち着きましたか?」
「・・・すまない、取り乱した。その・・・不甲斐ない私で重ね重ね・・・。」
「正しい手続きでお願いします。」
「わ、分かった。では、早速結婚承諾書を。」
二人きりで書いた承諾書を持って、私たちは届け出を出した。通常なら、三日程で受領される。
「後手になったが、これを受け取ってくれ。」
差し出されたのは、いつから準備していたのかお揃いの指輪だった。何もかもこれからだけど、結婚式もやってくれると言う。
だから、私はこの家でやれるくらいの規模にして欲しいとお願いした。お願いはお願いだけで終わることをこの時の私は知らない。
「私を貰ってくれてありがとう、エイリン。正真正銘、私はエイリンのものだ。好きに使ってくれ。」
またしても不穏な事を言っているが、その部分は受け流しておいた。家の中は、嫁の方が強いくらいで丁度いいと誰かから聞いたことがある。
「何か欲しいものは無いか?何でも言ってくれ。家でも領地でもエイリンが望むなら手に入れる。」
「一番欲しいものは手に入ったので十分です。」
「どういう意味だ?」
「リューさんが手に入ったので十分です。」
何故、そこまで喜ぶ?と思うほど、嬉しそうなリューさんの顔。まぁ、私も嬉しい。
「あ、そうだ。薬草園はどうだ?」
温度調節付きの温室が作られたのは、私も辞退出来なかったが故の結果だ。それに、本音は嬉しい。これで、貴重な薬草を栽培することが出来る。
お城お抱えの温室には負けるけれど、一家に通常なら用意出来る規模ではない代物が出来上がった。お花もあるので、気付いたらあの蜂さんたちが移住して来ていた。皆は吃驚していたけれど、護衛にもなるので放置された。
そして、今日も蜂さんの童謡を鼻歌で歌いつつ土いじり。最近、あの見習いたちが家を訪ねて来る様になった。というのも、薬草園に隣接して作業場まで作ってくれたからだ。
そう・・・庭の面積が増えた。確か、お隣りさんが居たのに、今はただの平地になっている。立っていた筈の建物は、今では跡形もない。
そして、リューさんが隣接していた土地を買収したと言うのは今後知る事となる。ちょっと処ではない、過保護過ぎるのでこれ以上は拒否すると伝えておいた。