第19章 欲しいもの
私が城に来て、薬師としてレクチャーする相手は四人ほど。通常はこんな風に師匠について学ぶものらしい。でも、私は師匠になった訳ではない。
ただ、薬師見習いにレクチャーするだけだ。私より少し年下の若い男女四人は、とても素直で勤勉家だ。貴族出身ではないとのことで、私とも直ぐに打ち解けた。
そして、最近、リューさんの視線が賑やか?というか、何かを言い掛けて黙り込むの繰り返しだ。ひょっとして、薬師の勉強会としてお城に行くのは反対だったのだろうか?
それとも、他にも理由が?
そう言えば、あの冒険者たちと関わりがあったそうだけど、あのヒーラーも魔法使いも美人だった。
「どうかしましたか?エイリンさん。」
一人の見習いが声を掛けて来たので、私は決心をして一度家に戻る事を告げた。ノーチェ様からは、帰りたい時は帰ってもいいと聞いている。
魔法陣で家へと飛び、直ぐにリューさんに会いに行った。リューさんは珍しく、庭にあるベンチで空を見上げていた。
「リューさん?」
ゆっくりと私に目を向けたリューさんの瞳が大きくなった。
「とうとう・・・幻まで見るとは、余程私はエイリンに焦がれているらしいな。」
切投げな眼差しに、私は胸が掴まれる思いがした。こんなにもリューさんは、私を想ってくれていたのか。
幻だと思っているのに、フラリと立ち上がり私の元へと近付いて来ては抱き締められた。いつもの優しい香りがした。
「今の幻は・・・実感も出来るのか?いや、私の思い込みなのかもしれないな。」
「私を幻にしないでください。本物ですから。リューさん、私がいなくて寂しかったですか?」
「本物・・・?」
「リューさんに会いたくて一時帰宅しましっ!?」
思わず濁った声が出そうになった。それほど、強く抱き締められ内臓が出るかと思った。
「エイリン・・・私のエイリン・・・。」
「そうです、リューさんのエイリンです。なので、私と結婚してください。あ、拒否は受け付けません。リューさんは、もう私のものなのですから。」
リューさんの顔を覗き込むと、真っ赤になったまま固まっていた。器用だななんて思っていると、熱烈なキスをお見舞いされた。
「勿論だ、今すぐに結婚しよう。承諾書なら準備してある。役所にも手回しして迅速に受け付ける様にっ!!?」