第18章 一つずつ丁寧に
あの後、紅蓮の牙の一行たちはギルドに毎日顔を出す様になったらしい。毎日ということは、重要な依頼を受けずにいると言うこと。
ギルドの重要案件が減らずに、何とか依頼を受けさせようとしているらしいがその素振りがないそうだ。ただ、毎日決まってエイリンの訪れを尋ねるのみ。
それに引き替え、エイリンは持ち帰り様の携帯食を売り出し繁盛していると聞く。テイラーが泣いて喜ぶ程にだ。
と、言うことは口コミであの者たちにも知られる訳で・・・。どうやら、二日遅くあの店【車輪の拠り所】の名を掲げる店へと来たらしい。
その頃には、エイリンは遣り切った感があったらしく、今は我が家で薬作りを再開している。私の顔色を見て、再開したのだとルカに聞いた。
「リューさん、エイリンです。」
「入ってくれ。」
家で仕事をしている時には、決まってエイリンが共に食事をしようと声を掛けて来る様になった。断わる選択肢はない。私はエイリンを撫でながら、共に食事を楽しむ。何と、素晴らしい日常なのだろう。今日もエイリンが愛らしい。
食事の後は、決まって両手で私の頬に触れ私の目を見る。体調確認だと言うのだが、これが嬉しくて心が跳ねる。何なら、このまま口付けても・・・口付けて?・・・ん?
エイリンの顔が近い。そして、柔らかい唇への感触。あ、何か喉を通っていくこれは?
「飲みましたね?」
「あ、あぁ・・・今のは?」
「通常より効能が二割くらいしかない、媚薬の粉仕様です。」
まさかの媚薬だった。エイリンから望まれるのなら、毒でも構わない。それ程エイリンを愛しているが、そのエイリンから媚薬?
「リューさんが実験になってくれるのですよね?」
「あ、あぁ、言った。」
「二割くらいしかないので、そう強い効き目はないと思います。たぶん、少し元気になるくらいですかね。」
そう聞いてから、一時間ほどが過ぎた。
「・・・苦しい。」
正確に言うと、息苦しいなどではなく熱っぽく主に身体の下半分がだが。エイリンは二割だと言っていた。エイリンが言う二割って・・・。
今、エイリンの顔を見たら間違いない襲う。断言できる。
「何ってものを作ったんだ・・・。」
妙な熱を発しながら処理していく書類たち。段々と呼吸が・・・なぁ、エイリン。二割ということは、それ以上を作ることも可能だと言うことだよな?