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清算は断罪と共に

第18章 一つずつ丁寧に


「エイリン、ただいま。」
「お帰りなさい。大丈夫でした?」
「あぁ、引き取って貰った。二度と、関わっては来ないだろう。安心してくれ。」

エイリンの顔に笑みが浮かぶ。

「その笑顔も愛らしいな。」

抱き締め口付けをする。今晩は、エイリンを愛そう。優しく一つずつ丁寧に。一日も早く、決断してくれる様に。


あれからというもの、エイリンに近付く不埒ものはいなくなった。ギルドでは、それなりに良い付き合いが出来ているらしい。

確かに、エイリンが作る薬は効能が高い。その事のに目を付けたのは、Aランクの【紅蓮の牙】という冒険者グループ。エイリンを専属にしようと画策しているそうだ。

貴族の令嬢を撃退したかと思えば、次は冒険者か。確かに、エイリンの薬が常備手に入るとあれば冒険の質も向上するだろう。

さて、どんな方法で撃退をしようか・・・そう考えていると、エイリンが私の執務室へと訪れた。

「ごめんなさい、お仕事中なのに。」
「いや、丁度、休憩をしようかと思っていたから問題ない。何か心配事か?」
「あの・・・薬を暫くお休みしようかと思って。」

薬師のエイリンから、薬作りを休むという言葉を聞く時が来るとは思ってもみなかった。ソファーを勧めては、横並びに私も腰を下ろした。優しくエイリンの髪を撫で、その決意に至った理由を尋ねる。

「理由を聞いても?」
「えっと・・・その・・・。」

視線をあちこちに彷徨わせていたが、決心したのかポツリと言葉を溢した。

「・・・面倒くさくて。」

エイリンが言う面倒とは、薬作りのことではないだろう。という事は、あの冒険者たちのことか。ギルドに行けば、会う切っ掛けとなるだろうから。

「エイリンの自由にすればいい。」
「その代わりに、テイラーさんたちのお子さんのお店をお手伝いをしようかなと思って。」
「分かった。」

薬作りが大好きなエイリンがどれだけ薬作りを休むのか分からないが、遣りたいことは可能な限りやらせてやりたい。

「ルカを連れて行くならだが。」
「ありがとうございます、リューさん。」

エイリンのその笑顔で、私はいい決断をしたのだと思えた。甘いと謂れ様が気にしない。ただ一つだけ・・・ルカからの報告によると、別の意味で戦々恐々としたらしいのだが。
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