第17章 羽虫一族
最後は、疲れからか私の腕の中で眠ってしまった。離れたくないと意思表示するエイリンの可憐な手が、私の服を握り締めていた。
「こんな風に私を求めてくれる事が嬉しいなんて言ったら、エイリンは怒るだろうか。愛らしいな、私のエイリンは。」
この日は、エイリンをそのまま抱いて眠った。
翌朝、柔らかく触れる感触に私は目を覚ました。目の前には、目を閉じ私に口付けをするエイリンの顔があった。
エイリンの後頭部に手を回し、浅い口付けを深いものへと変えていく。その熱に応えてくれるエイリン。
「おはよう、エイリン。」
「おはようございます。」
ギューっと私に抱き付くエイリン。朝からエイリンが可愛い。そんな愛らしいエイリンの頭や額、頬にキスを落としていく。
「愛してるよ、私のエイリン。」
「リ、リューさんは、私のものですよね?」
「あぁ、そうだ。」
「良かった・・・。」
エイリンの神経を逆なでした切っ掛けは、街での散策中だったらしい。ネルたちの子が経営する店で食事をした後、出会ったのは貴族の令嬢たち。
相手は集団で気が大きくなったのだろうか、直に私を貴族に率いれるのだと啖呵を切った令嬢がいたそうだ。最初は相手にしていなかったエイリンだったが、後を付いてきては悪態を止めなかったとのこと。
そして、その内の一人の令嬢に仕える下人たちに捕まえられそうになったが、ルカが何とか撃退したそうだ。まぁ、腹が立つがそういうことは起こることは無いとは言えない。
それからというもの、エイリンが街に出掛ける時に示し合わせた様に令嬢たちは現れる様になった。その度に、エイリンを私から遠ざけようと尽力していたそうだ。
何度か、家にも押し掛けられたらしく、エイリンはすっかり気落ちしてしまった。そこへ現れたのは、ノーチェ様。
エイリンの処遇を耳にして、慰めるどころか追い打ちの言葉を吐いたらしい。
「だから言っただろう?早い内に決断しないと、今に足元を掬われてリューを貴族社会に取り込まれるって。今は私が何とか防いでいるが、今後とも防げるとは限らないぞ。」
エイリンが悪いかの様に言ったノーチェ様の言葉に、大激怒してから大号泣したらしい。王太子相手に、「大嫌いっ!!」と言ったのは私も無理もないと思う。