第17章 羽虫一族
「世話になった。」
それは低く重厚ある声だった。
「許可を頂きありがとうございました。」
「私の方こそ、愚息の後始末を任せてしまいすまなかった。今後は、王妃だけでなく生まれて来る子にも心を向けよう。」
「えぇ、それが良いかと。」
苦い顔をした国王だったが、且つての息子に目を向け諦めた様に笑う。
「私たちが、気に掛けなかった結果がこれなのだな。」
私は何も答えなかった。確かに、放任した結果がこの状況だ。今後生まれて来る王子若しくは王女には、気を向けて欲しいと切に願う。
私はそのまま、溶ける様に国王の前から消えた。
「終わったのか?」
「えぇ、滞りなく。」
「それは良かったのだが・・・。」
何やら、ノーチェ様が煮え切らない態度。
「如何致しました?」
「エイリンが・・・腹を立てている。」
「エイリンが?」
確かに、ずっと家に帰れていなかった。この日をカウントして、三週間は会えずにいる。
「会えずにいる私を想って、寂しがってくれていたのでしょうか。」
「それもあると思うのだが・・・すまない、失言を許せ。」
「つまり、腹を立てさせたのはノーチェ様と言うことでしょうか。」
「笑顔が怖い、怖いから!!ちょっと、ちょっとだけだ。」
私は自宅に飛んだ。そこには、途方に暮れているルカと・・・大号泣中のエイリンと、それを必死に宥めているテイラーがいた。
「この状況は・・・。」
「リューさんっ!!」
愛らしい瞳を大きく開き、ボロボロと涙を溢しながら私にしがみついて来たエイリン。そんなエイリンを優しく抱き留め自室へと飛ぶ。
二人でソファーに座り、私はエイリンに優しく声を掛けた。
「何があったのか、話してくれ。」
そう声を掛けたが、興奮している様で泣きながら説明する言葉は正しく聞き取ることは出来なかった。ならば、先ずは落ち着かせなければ。
たくさんキスをし、優しく抱き締め背を撫でた。泣いていたエイリンも、私とのキスに応えてくれる様になった。
「エイリン、愛してる。寂しい思いをさせてすまなかった。」
「リューさぁん・・・。」
どうやら、余程悲しいことがあったらしい。私にしがみついて離れようとしないし、かなり泣きはらしたのか目が赤い。