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【祓本】祓ったれ本舗の廻廻奇譚的日常

第1章 姉と弟




 夏油は言った。上司とは連絡が取れた。ただ様子がおかしく支離滅裂な言葉の羅列をならべている、と。

「今から彼に会ってくる。悟は、彼女の側に……」
「いや、僕もあいつも一緒に行くよ。原因はそいつなのは確実だろうし、どんな理由があろうと封印されたものを持ち出すなんて行為は許されるものじゃない」
「……そうだね」

 まさかも連れてくなんて言うとは思わなかった夏油は細い瞳を少しだけ見開いた。普段であれば相談者を現場に連れて行くことはしないのに、"連れて行くことが最善"だと感じたのだろう。

「、今からオマエの上司の所に行くよ。会社まで案内して」
「あ、はい……!!」
「それと覚悟しといて」

 五条の言葉に、心臓がぎゅっと痛くなった。覚悟、とは。最悪なケースを頭の中に思い浮かべ顔が青ざめる。不安と恐怖が少女に襲い掛かるが、握っている手の温もりに気が付く。

「悠仁……」

 大切な家族。かわいい弟。無邪気に笑う悠仁の顔がこの世の何よりも大好きで愛おしい。上がっていた心拍数が少しづつ落ち着きを取り戻し、はまっすぐに五条と夏油を見つめた。

「行ってくるね、悠仁。少しの間、お留守番お願い」

 すっくと立ちあがり、握っていた手を離す。母親にも似たようなそれに、少しだけ羨望の眼差しで見つめる五条に気が付く夏油。当の本人はきっと気が付いていないだろう。言葉にすればきっと全力で否定するに違いない、まぁ、教えてやる気なんてさらさらないけど。踵を返して、夏油は外に駐車している車へと乗り込んだ。少し遅れてと五条も乗り込み、アクセルをゆっくりと踏み込んだ。


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