• テキストサイズ

【祓本】祓ったれ本舗の廻廻奇譚的日常

第1章 姉と弟




「、これを渡してきた上司とやらの連絡先、教えてくれる?」
「連絡先、ですか……?」
「何が目的で木箱を持ってきたのか、どこから持ってきたのか、オマエがゲームに負けるように仕組んだんじゃないのか、いろいろ聞き出さないといけない」
「つまり、えっと……それは」
「君は上司や仕事場の同僚たちに"呪い"を受けたんだよ。結局受けたのは君じゃなく、弟の方だけどね」

 五条の代わりに夏油がそう言った。彼らの話していることの半分も理解できていないだったが、唯一理解できたことと言えば、彼らのせいで弟が呪われたということ。その事実に怒りと憎しみが彼女の心を支配していく。一体何が目的で。なんで自分が呪われなければ。弟がこんな目に。
 今ここで怒りを露わにしても弟がすぐに目を覚ますわけでもない、胎の子がいなくなるわけでもない。ぐっと唇を噛みしめ、は夏油に上司の連絡先を紙に書いて渡した。それを受け取ると夏油は家の外にでて電話をかけ始めた。その間、五条は悠仁の腹に残る傷跡を綺麗に治し、鬼が簡単に胎を破って出てこないように印を結ぶ。

「気休めだよ」

 出にくくなる、というだけで封印したわけでもないし祓ったわけでもない。定期的に印を結ばなければまた同じように胎を突き破ってくるだろう。五条はそう言った。

「に教えるよ。未熟とはいえ、一度出た鬼を戻せたんだ。オマエがいたから悠仁は助かった」

 涙が溢れた。自分が木箱なんて持って帰らなければ、もっと早くお寺に持って行けば。後悔ばかりが募って弟を死なせてしまうかもしれないと言う恐怖に脅えて。だけど五条の一言で少しだけ救われたような気がした。自分が持っている不思議な力を今日ほど嬉しく思ったことはない。
 透明な水滴をポロポロと零しながら、はまだ眠っている弟の手をぎゅっと握った。何度も弟の名を呼ぶ少女の後姿を見ていた五条は視界の隅に入った夏油に気が付く。部屋の前で夏油は困ったような顔をしていた。

「どうしたんだよ」
「少し厄介なことになった」
「は?なに、どういうこと?」

 ちらりと横目でを見る夏油。どうやら彼女に会話を聞かれたくないらしい。居間から離れた場所で夏油は声を落として電話の内容を話し始めた。


/ 13ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp