第1章 姉と弟
先ほどまで家の中をきょろきょろとしていた五条は少年を見るなり、車内で見せた真剣な表情に変わり真っすぐに少年に向かって部屋の中に足を踏み入れた。部屋の入口で様子を窺っていたに五条は少年の名前を尋ねる。
「悠仁です、虎杖悠仁」
「悠仁ね、年齢は?」
「15です。今年高校生になりました」
「ふーん……」
五条はの返答を聞きながら、掛布団を勢いよく剥ぎ、パジャマの裾を上へと引っ張った。綺麗に割れた腹筋に残る小さな傷跡。五条はその傷をなぞるように指で触れ、ポケットにしまっていたサングラスを掛け直した。
「この傷、君が治したの?」
「は、はい……」
「"産まれた"の?」
「……はい」
「いつ?」
「3日前、です」
間髪入れずに質問をし続ける五条は最期の質問の答えが返ってくると軽く息を吐いた。そしてに向き直ると、自分の隣に来るように手招きをした。困惑するだったが、優しく夏油に背中をおされゆっくりと五条の元へと行き、隣に座った。
「傑も来て」
「珍しいじゃないか、私も呼ぶなんて」
いつもなら少し離れた場所で君を見守るだけの役割なのに。くすくすとどこか嬉しそうに笑って夏油もまた五条の隣に座った。
「、オマエの言う通り悠仁は鬼の子を孕んでいるよ。そして、もう手遅れだ」
「そんな……じゃあ、悠仁は……」
「悠仁自体はあと数日もすれば目が覚める。今は胎の子の影響で体力を奪われているだけだ」
五条は言った。胎の子は悠仁と同化し、身体の一部となってしまっているため、鬼の子を祓うともなれば弟も一緒に祓うことになる、と。そして、元々"ソレ"はやはり悠仁ではなくに孕む予定だったと言う。
「でも、君はこれを"ゴミ"としか思わなかった。でも悠仁は違う。箱の中身を見て"胎児"だと思ってしまった。それがこの子が鬼を孕んだ理由だよ」
木箱の中は成長しきれず堕ろした子供のミイラが入っていたという。それを少女はゴミだと認識し、少年は退治だと認識した。意識の差異がこのような結果を産んでしまった。