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【祓本】祓ったれ本舗の廻廻奇譚的日常

第1章 姉と弟



 東京都渋谷区。人口約23万。東京都に23ある特別区の一つであり、23区の南西部に位置し、新宿・池袋ともに山の手の3大副都心の一つである渋谷駅から歩いて約30分ほどの場所に、そのマンションはある。高級マンションの7階、角部屋、南向き。玄関の扉にぶら下げられたプレートにはこんな文字が刻まれていた。

【相談屋・祓ったれ本舗】

 初めてこの場所を訪れた者は「うさんくさすぎる」と同じことを思ったに違いない。
 少女―――虎杖は、部屋の前に立ち大きく息を吸った。どくどくと流れる血液は心臓の鼓動を大きくさせている。玄関の横のインターホンを鳴らそうと人差し指を伸ばしたと同時に、静かな音を立てて扉が開いた。
 中から顔を出したのは、長い髪の毛をお団子にまとめ上げた青年の姿が。穏やかな笑顔で「いらっしゃい」と心地のいい優しい声が降り注いだ。
 は急に開いたことに驚きはしたものの、青年の礼儀正しさに少しだけ安心を覚えた。

「虎杖さんだね。さ、中に入って」

 中に入るように促され、一度頭を下げるとは部屋の中に足を踏み入れようとして固まってしまった。玄関の床が大理石で作られていることに気が付き、汚い靴で上がってもいいものか一瞬悩んで躊躇してしまったのだ。エントランスから分かりきってはいたが、いざ中に入るとなると場違いなのではないかと思ってしまう。
 フロントカウンターにいたコンシェルジュに訪問の内容を言うだけでも緊張したと言うのに、エレベーターには階のボタンが無かった。慌ててコンシェルジュに伝えると「御用のある階にのみ止まるシステムです」と丁寧に返答を貰い、高級マンションって怖いと呟いた。
 閑話休題。話を戻そう。
 恐る恐ると言った様子で部屋に入ったは奥の部屋へと案内される。白と青で統一されたそこはとても清潔で爽やかな香りが充満していた。明るい部屋に気分も少し落ち着いたかと思った矢先、彼女の目に映る人物に言葉を失ってしまった。
 日の光に当たってキラキラと輝く真っ白い髪の毛、サングラスの奥から覗く海のような青い瞳。人間とは思えない容姿に、はその場から動けなくなった。



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