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【祓本】祓ったれ本舗の廻廻奇譚的日常

第1章 姉と弟




「あんた、こいつになんの恨みがあんの?」
「……恨み?何をおっしゃっているのかわからないのですが」
「とぼけんじゃねえよ。オマエがこいつに渡した木箱の中身、知らなかったわけじゃねえよな?」

 何が面白いのか、五条は喉奥で笑いながら男を睨みつける。真っ青な瞳に男は肩を揺らすが、息を軽く吐いて気丈な態度を崩すことはなかった。

「知りませんでしたよ、あの箱の中なんて。先代が封印しているということしか私は聞かされていませんので」
「ではなぜ彼女にその箱を渡したのですか?」
「渡したって、罰ゲームなんですからしかたないじゃないですか」
「罰ゲームにしたって持って返させる意味は?先代ということはあなたの家は少なくともそう言う家系だったのでしょう。他人に渡すメリットなどないはずですし、そもそも禁忌だと分からなかったんですか」

 五条と夏油に詰められ、男はどんどん機嫌を悪くしていった。眉間の皺は濃くなり、貧乏ゆすりが増え、伸ばしていた背中は椅子の背にもたれるようにだらしなくなる。
 イライラした様子を隠そうともしない男に怯むなんて言葉は辞書に載っていな五条は口の端を上げたままサングラスを外した。

「全部計算だろ。オマエの」
「は?計算……?何の話をしてんだよ」
「虎杖。オマエはこの女を手に入れたいがために、こいつの父親を殺し母親を自殺に追い込んだ。……そうだろ?」

 衝撃の発言に、は困惑した表情で男に目を向ける。男は驚いた表情で五条を見つめ、その唇は震えていた。

「は、はは……何を言っているんだ、君は。これ以上変なことを言うようであれば……」
「口で説明すんの面倒だな。特別に"視せて"やるよ。目ん玉かっぴらいてよく見とけ」

 五条はそう言うと、瞼を閉じて右手の人差し指に中指を絡め、掌印を結んだ。瞬間辺りは真っ暗な闇に包まれる。会議室にあったはずのテーブルや椅子は姿を消し、暗闇には4人だけがぽつんと存在している。しかし、五条が目を開けると同時に世界は色を取り戻した。そこに映し出された映像には、中学の制服に身を包んだが楽しそうに笑っていた。


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