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【祓本】祓ったれ本舗の廻廻奇譚的日常

第1章 姉と弟




 感情をどこかに落としてしまったのではないかと思うほど、淡々と話をする。想像を超える出来事に夏油は何も言えなくなってしまった。

「実は今の会社、父が生前勤めていた会社なんです。当時、父と仲の良かった人が私たちの事を気の毒に思い、何の資格もない私を入社させてくれたんです。その人は昨年定年退職されました。寂しくはありましたが、彼がいなければ私達は満足な生活を送れていたか分かりません。とても感謝しています。今の上司はその方の息子さんです。父の部下でした」

 そこまで話したところで、車はの会社の前に着いた。五条と夏油は彼女の話を聞いて、の父を殺した犯人も鬼の子が入った木箱をに渡したのかも全ての謎が解けた。
 正面入り口から会社に入り、夏油は受付嬢に自分の名を名乗るとすんなりと奥の部屋へと通された。夏油の容姿の良さに目を奪われる受付嬢を横目にもまた奥の部屋へと足を運んだ。
 長いテーブルが4つ、一つの島のようにくっつけられ、8脚の椅子が綺麗に向い合せに並べられている少し狭い会議室に、五条を真ん中にし3人は並んで座った。扉に近い場所に座っていたは緊張気味に何度も扉に目を向ける。時間にして5分くらいだろうか。ドアが3回程ノックされた後、ゆっくりとそれは開いた。

「お疲れ様です。忙しい中、ありがとうございます」

 上司と思われる男性が部屋に入って来たと同時には椅子から立ち上がり頭を下げた。上司は「いいよ、座って」とにこやかにに言うと、五条と夏油に目を向けて「本日はわざわざご足労いただきありがとうございます」と軽く会釈をした。

「御託はいいから座りなよ。無駄話するためにここにきたわけじゃないんだから」
「時間を作ってくれたんだから頭くらい下げたらどうだ」

 傍若無人な物言いの五条に上司の眉毛がピクリと動いた。注意を促すも五条は聞く耳を持たないようで「単刀直入に言うけどさ」と話題を切り出す。



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